『白鳥とコウモリ』東京ドームの嘘はなぜ?倉木達郎の証言を考察
※この記事には、映画『白鳥とコウモリ』の重大なネタバレがあります。
映画『白鳥とコウモリ』を観ていて、かなり引っかかるのが倉木達郎の「東京ドーム」の話です。
白石健介とは東京ドームで知り合った。
しかも、一緒にビールを飲んだ。
かなり具体的な話なので、最初は本当なのかと思ってしまいます。
でも、この証言には嘘が混じっていました。
では、なぜ達郎は東京ドームという場所を使ったのでしょうか。
そして、なぜそこまで具体的な嘘をつく必要があったのでしょうか。
ここでは、映画の中で分かる事実と、そこから考えられることを分けて整理します。
倉木達郎の「東京ドーム」の話は全部が嘘ではない
まず大事なのは、達郎の話が最初から最後まで全部作り話というわけではないことです。
達郎は、白石健介との関係について東京ドームで行われた野球観戦を持ち出します。
そして、そこで一緒にビールを飲んだという趣旨の話をします。
しかし後になって、その説明には矛盾があることが分かります。
つまり達郎の証言は、
本当の出来事の中に、必要な嘘を混ぜた証言
だったと考えるのが自然です。
この「本当と嘘を混ぜる」というやり方は、達郎という人物を考えるうえでもかなり重要です。
なぜ東京ドームという場所を使ったのか
ここからは考察です。
達郎が東京ドームを使った理由として一番考えやすいのは、
白石健介と偶然知り合ったという説明を成立させやすい場所だったから
ではないでしょうか。
東京ドームには多くの人が集まります。
しかも野球観戦なら、知らない人同士でも隣の席になったり、会話をしたりしても不自然ではありません。
愛知に住む達郎が中日戦を観に東京まで来ていたとしても、不自然ではありません。
一方、東京に住む白石が東京ドームにいることも不自然ではない。
つまり、
「二人が偶然出会った場所」
として非常に説明しやすい場所だったわけです。
巨人対中日戦だったことにも意味がある?
ここも考察になります。
達郎は愛知に住んでいます。
そのため、中日戦であれば、達郎が東京ドームへ来ていた理由を説明しやすくなります。
ただ東京へ来た、というだけでは少し不自然です。
でも、
「中日戦を観に来た」
なら理由として分かりやすい。
だから東京ドームだけではなく、対戦カードまで含めて設定した可能性があります。
ただし、映画の中で「中日戦を選んだ理由」が明確に説明されているわけではありません。
ここは作品から読み取った考察です。
達郎はなぜ「ビールを飲んだ」とまで言ったのか
ここが一番気になる部分です。
単に、
「東京ドームで知り合った」
だけでもよかったはずです。
それなのに達郎は、白石と一緒にビールを飲んだという具体的な話までしています。
おそらく達郎は、二人の関係をより自然に見せようとしたのでしょう。
野球観戦。
隣り合った二人。
ビールを飲みながら話す。
これなら、初対面の二人が打ち解ける流れとして非常に分かりやすいです。
つまり、
嘘を本当らしくするために具体的な描写を足した
可能性があります。
ところが、その具体性が逆に達郎の証言を崩す原因になります。
なぜ東京ドームの嘘がバレたのか
達郎の証言に疑問を持ったのは、白石美令と倉木和真です。
公式でも、二人はそれぞれ父親の言動に違和感を抱き、達郎の証言が嘘ではないかと考えていく人物として描かれています。
特に重要なのは、警察が見つけた大きな証拠ではなく、
家族だからこそ分かる違和感
だったことです。
美令は父・白石健介という人物を知っています。
和真も父・倉木達郎という人物を知っています。
だからこそ、証言の細かい部分に対して、
「父なら本当にそんなことをするだろうか」
と疑うことができたわけです。
この作品では、真相への入口が「家族だから分かる小さな違和感」になっています。
東京ドームの証言は達郎の性格をよく表している
東京ドームの話は、単なる伏線ではありません。
倉木達郎という人物の性格もよく表しています。
達郎は、何も考えずに嘘をついたわけではありません。
過去の出来事、自分の行動、実際に存在する場所などを利用しながら、かなり慎重に話を組み立てています。
つまり、達郎の嘘は雑ではありません。
それでも完全には隠しきれなかった。
なぜなら、
事実を知っている人ではなく、その人自身をよく知っている家族が疑ったから
です。
ここが面白いところです。
達郎はその場で即興で嘘を作ったのか
映画だけを見ると、達郎がどこまで前もって話を準備していたのかは断定できません。
ただ、内容の具体性を考えると、完全な思いつきだけで話したとは考えにくいです。
達郎は、自分が白石殺害の犯人だと警察に信じ込ませる必要がありました。
そのためには、
「なぜ白石と知り合ったのか」
「なぜ関係が続いたのか」
という説明まで必要になります。
つまり東京ドームの話は、単なる雑談ではありません。
自分を犯人として成立させるために必要な設定
だったと考えられます。
なぜ達郎はそこまでして嘘をついたのか
では、なぜ達郎はここまで周到な嘘を作ったのでしょうか。
理由は、安西知希を守るためです。
達郎は、過去の事件で真実を明らかにしなかったことで、福間淳二とその家族の人生を変えてしまったという後悔を抱えています。
そして今度は、その福間家につながる知希が白石を殺してしまいます。
達郎にとっては、
「また自分のせいで、この家族を不幸にしてしまう」
という思いがあったのでしょう。
だから、自分が罪をかぶることを選びます。
東京ドームの嘘も、そのために必要だった一つの部品だったわけです。
「嘘をついているのに、全部が嘘ではない」という構造
倉木達郎の証言で面白いのは、完全な作り話ではないことです。
現実に存在する場所。
実際の自分の行動。
本当にあった出来事。
そうしたものに、必要な部分だけ嘘を加える。
だから聞いている側も、すぐには見抜けません。
演じた三浦友和さんも、倉木達郎について、嘘をついている一方で嘘ではない部分もある人物だという趣旨の説明をしています。
この言葉は、東京ドームの証言にもかなり当てはまります。
全部が嘘なら簡単に崩れます。
でも事実の中に嘘があるからこそ、真相が見えにくくなっているわけです。
東京ドームの嘘は「親子が真相へ向かう最初のヒビ」
物語全体で見ると、東京ドームの証言はかなり重要な役割を持っています。
この小さな違和感がなければ、和真と美令は父親の言葉を疑わなかったかもしれません。
そして二人が協力して真相を追うこともなかった可能性があります。
つまり東京ドームの嘘は、
達郎の偽装を崩す最初のヒビ
ともいえます。
大きな証拠ではありません。
でも、家族だけが気づける違和感から事件全体が揺らぎ始めます。
この作り方は『白鳥とコウモリ』らしいところだと思います。
まとめ|東京ドームは「本当の中に嘘を混ぜる」ための場所だった
倉木達郎が東京ドームの話をした理由は、映画の中ですべて明確に説明されているわけではありません。
ただ、物語から考えると、
白石健介と自然に知り合ったように見せるため
という理由が最も考えやすいです。
東京ドームなら多くの人が集まり、偶然出会っても不自然ではありません。
愛知に住む達郎が中日戦を観戦するという説明も作りやすい。
そしてビールを一緒に飲んだという話を加えることで、二人が親しくなった流れまで自然に見せようとした。
ところが、その具体的な説明が逆に違和感を生みます。
そして、その違和感に気づいたのが、父親をよく知る和真と美令でした。
東京ドームの嘘は、一見すると小さな話です。
でも実際には、倉木達郎の嘘が崩れ始める重要なきっかけでした。
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