『沈黙のパレード』町の人たちは何をした?蓮沼殺害計画を時系列で解説
※この記事には映画『沈黙のパレード』の蓮沼殺害計画、犯人、殺害方法まで重大なネタバレがあります。
『沈黙のパレード』で最も複雑なのが、
「町の人たちは結局何をしていたの?」
「全員が蓮沼を殺したの?」
という部分です。
佐織を愛していた町の人たちは、確かに蓮沼寛一(はすぬま・かんいち)への復讐計画を立てていました。
しかも一人が犯行を行うのではなく、
複数人が作業を細かく分担する。
という非常に特殊な計画でした。
しかし終盤で明らかになるのは、
町の人たちが計画したことと、実際に蓮沼が死亡した経緯は完全には同じではない。
ということです。
今回はパレード当日まで含め、順番に整理します。
まず町の人たちが復讐を考えた理由
並木佐織(なみき・さおり)は町の人気者でした。
歌手になる夢を持ち、家族だけでなく商店街の人々にも愛されています。
しかし佐織は失踪し、数年後に遺体で発見されます。
容疑者となったのが蓮沼です。
蓮沼はまた釈放される
蓮沼には、以前にも少女殺害事件で無罪になった過去があります。
そして佐織事件でも完全黙秘。
警察は決定的な証拠を固めることができず、蓮沼を釈放します。
町の人々にとっては、
「佐織を殺した男がまた逃げ切った」
ように見えました。
蓮沼が菊野へ戻ってくる
さらに蓮沼は、並木家や佐織を知る人々のいる菊野へ戻ってきます。
蓮沼は周囲を挑発するような態度まで見せます。
そこで人々の怒りは限界へ達します。
町の人たちは「自分たちで蓮沼に罪を認めさせる」と考える
町の人々が考えたのは、単純に一人が蓮沼を襲う方法ではありません。
もし一人で行えば、その人物だけがすぐ疑われます。
そこで、
複数人がそれぞれ一部分だけを担当する。
という計画を立てます。
計画の中心となるのが液体窒素
蓮沼を追い詰めるために利用されたのが、
液体窒素。
です。
液体窒素は気化すると大量の窒素ガスになります。
閉め切った空間に大量の窒素が入れば、空気中の酸素濃度が下がります。
この性質を利用して、蓮沼を窒息状態へ追い込もうとしました。
戸島修作が液体窒素を用意できる
戸島修作(とじま・しゅうさく)は冷凍食品会社「トジマ屋フーズ」を営んでいます。
そのため、液体窒素と接点のある人物です。
湯川が物理的な殺害方法を考えたとき、ここが重要な手がかりになります。
でも戸島一人が運べばすぐ疑われる
そこで計画では、液体窒素を一人が最初から最後まで運びません。
パレードという大規模なイベントを利用し、
複数の人物が輸送を分担。
します。
それぞれは短い区間だけ関わるため、一人ひとりを見ると殺害行為から遠く見えます。
液体窒素はパレードの道具に紛れ込ませる
液体窒素をそのまま持ち歩けば目立ちます。
そこでパレードで使用する宝箱などの道具に隠して運びます。
大勢の人と大道具が行き交う祭りの日なら、不自然に見えにくい。
パレードそのものが犯行計画のカモフラージュになっています。
宮沢麻耶はパレードを取り仕切る立場
宮沢麻耶(みやざわ・まや)は商店街の本屋を営み、パレードにも深く関わっています。
町の人々が自由に移動し、道具を受け渡すには、パレードの流れをよく知る人物の存在が重要です。
高垣智也も計画へ関わる
高垣智也(たかがき・ともや)は佐織の恋人です。
当然、蓮沼を強く憎む理由があります。
高垣も計画の一部分を担当し、液体窒素を目的地へ近づける役割を担います。
最終的に実行する予定だったのは並木祐太郎
並木祐太郎(なみき・ゆうたろう)は佐織の父親です。
町の人々が考えていた計画では、祐太郎が最終段階を担当する予定でした。
娘を奪ったと信じる相手へ、自分の手で真実を吐かせたい。
祐太郎にとっては非常に強い思いがあります。
ところが当日、祐太郎が動けなくなる
パレード当日、「なみきや」の客が急に体調を崩します。
祐太郎はその対応をしなければならなくなり、予定していた行動ができません。
これによって計画は狂います。
実はこのトラブル自体が仕組まれていた
後に明らかになるのが、
祐太郎を蓮沼のところへ行かせないため、意図的に足止めする仕掛けが作られていた。
ことです。
そしてこの状況を作った人物が、新倉直紀です。
新倉直紀が祐太郎の代わりに蓮沼のもとへ向かう
新倉直紀は佐織の才能を見出した音楽プロデューサーです。
町の人々と同じく蓮沼への復讐計画に関わります。
しかし直紀には、他の人たちとは違う秘密の目的がありました。
直紀は妻・留美の秘密を知っていた
新倉留美は、佐織が失踪した日、自分が佐織を突き飛ばしたことを直紀へ告白します。
留美は自分が佐織を殺したと思っています。
さらに蓮沼がその秘密を利用して留美を脅していました。
直紀は妻を守ろうとします。
町の計画は「蓮沼に真実を吐かせる」ためだった
町の人々の計画と、直紀自身の目的は完全には同じではありません。
町の人々は蓮沼を追い詰め、佐織について真実を吐かせたい。
しかし直紀には、
蓮沼を生かしておけば留美の秘密がいつまでも残る。
という問題があります。
直紀は計画を利用して蓮沼を殺害する
直紀は液体窒素を使う計画を利用します。
そして蓮沼の部屋へ行き、酸素濃度を低下させ、蓮沼を死亡させます。
つまり、
町の人々による復讐計画の中へ、直紀個人の殺意が入り込んだ。
ことになります。
その後、直紀は「蓮沼が自白した」と話す
直紀は、死ぬ直前の蓮沼が、
「佐織を殺した」
と自白したという趣旨の説明をします。
しかし、これは嘘です。
なぜそんな嘘をついたのでしょうか。
目的は妻・留美を守ること
もし蓮沼が佐織を殺したと自白したことになれば、留美は佐織殺害の罪から外れます。
直紀は、
蓮沼を殺す。
佐織殺害の罪も蓮沼へ負わせる。
そうすることで妻を守ろうとします。
ところが湯川がさらに真相へ近づく
湯川は物証から、
留美が佐織を突き飛ばした時点では、佐織はまだ生きていた可能性がある。
ことに気づきます。
つまり留美は、最初から佐織を殺していなかった可能性が高い。
直紀の殺人は、妻が犯していなかった罪を隠すために行われたことになります。
町の人たちは全員「殺人犯」なの?
ここは分けて考える必要があります。
町の人々は違法な復讐計画へ関わっています。
しかし、
実際に蓮沼を死亡させた行動まで全員が共有していたわけではありません。
直紀は町の計画を利用し、独自の目的で蓮沼を殺します。
だから全員にアリバイがあった
計画の巧妙なところは、役割が分散していることです。
液体窒素を用意する人。
運ぶ人。
パレードの中で受け渡す人。
最終段階を担当する人。
それぞれの人物が別の場所で大勢に目撃されています。
そのため、警察から見ると、
「全員に動機があるのに、全員にアリバイもある」
という状況になります。
町の人々が全員沈黙した理由
一人が話せば、他の人間の関与まで分かってしまいます。
だから全員が互いを守る。
誰も計画を話さない。
この集団の沈黙が、警察の捜査を難しくします。
まとめ|町の人々は復讐計画を分担したが、実際に蓮沼を殺したのは別の思惑を持つ直紀
町の人々の計画を整理すると、
蓮沼へ佐織事件の真実を吐かせるため、液体窒素を利用する計画を立てる。
複数人で準備・運搬・実行を分担する。
パレードを利用して全員のアリバイを作る。
祐太郎が最終段階を担当する予定だった。
しかし祐太郎は足止めされ、直紀が代わりに蓮沼の部屋へ行く。
直紀は妻・留美を守るため、計画を利用して蓮沼を本当に殺す。
という流れです。
つまり、
町の人々の「共同計画」と、新倉直紀による「実際の殺人」が重なっていた。
のです。
この二重構造こそ、『沈黙のパレード』の事件が非常に分かりにくく、同時に面白い理由です。
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