『藁にもすがる獣たち』タイトルの意味を考察|なぜ“藁にもすがる”のか?
※この記事には『藁にもすがる獣たち』の内容に触れるネタバレがあります。
『藁にもすがる獣たち』というタイトルは、かなり強烈です。
「藁にもすがる」はよく聞く言葉ですが、そこに「獣たち」が加わっています。
なぜ「人々」ではなく「獣たち」なのでしょうか。
作品を見ると、このタイトルは1億円をめぐる登場人物たちそのものを表していることが分かります。
この記事では、『藁にもすがる獣たち』というタイトルの意味を考察します。
「藁にもすがる」とはどういう意味?
「溺れる者は藁をもつかむ」ということわざがあります。
追い詰められた人は、役に立たないものだと分かっていても、それに頼ろうとする。
そこから、
どうしようもなく追い詰められ、わずかな希望にまで頼る状態
を「藁にもすがる」と表現します。
登場人物はみんな追い詰められている
『藁にもすがる獣たち』の登場人物は、単なる金持ちになりたい人々ではありません。
それぞれに事情があります。
寛治は今の生活を変えたい。
江波戸良介は借金に追われている。
庄田美奈も多額の負債を抱えている。
だから彼らにとって1億円は、
ただの大金ではなく、今の人生から抜け出すための「藁」
なのです。
でも1億円は本当に「藁」なのか?
ここがおもしろいところです。
1億円は、本物の藁よりはるかに役に立ちそうに見えます。
借金を返せる。
生活を変えられる。
仕事を辞められる。
しかし実際には、登場人物たちは金を手に入れようとするほど危険な状況へ入っていきます。
つまり1億円は救いではなく、
つかんだ瞬間にさらに深く沈んでいく「藁」
でもあります。
なぜ「人」ではなく「獣たち」?
ここからは考察です。
金を目の前にした登場人物たちは、少しずつ理性を失います。
嘘をつく。
だます。
奪う。
裏切る。
場合によっては、他人の命まで軽く扱う。
その姿が、
理性より欲望で動く「獣」
として描かれているのでしょう。
最初から獣だった人ばかりではない
重要なのはここです。
寛治は、最初から犯罪者だったわけではありません。
ネットカフェでアルバイトをしている普通の大学生です。
しかし1億円を見つけたことで、最初の一線を越えます。
つまりタイトルは、
人が金によって「獣」へ変わっていく物語
とも読めます。
江波戸良介も「藁」にすがっている
良介は不良警官です。
一見すると寛治より悪人に見えます。
しかし彼自身も借金に追い詰められています。
だから1億円へ手を伸ばす。
良介にとっても金は、
沈みかけた人生から逃げるための藁
なのです。
し~なは「獣」の側?
森七菜さん演じるし~なは、金至上主義の人物として登場します。
寛治や良介のように徐々に欲望へ変わるのではなく、最初から金を武器に人を動かします。
その意味では、
「獣たち」の中でも、最初から自分の欲望を隠さない人物
とも考えられます。
▶ 『藁にもすがる獣たち』し~なは何者?森七菜演じる悪女の目的を解説
タイトルは登場人物全員を指している
タイトルは特定の一人を指しているのではありません。
「獣たち」と複数形になっています。
つまり寛治だけではない。
良介だけでもない。
し~なだけでもない。
金へすがり、欲望に支配されていく登場人物すべて
を表していると考えるのが自然です。
本当の「獣」は人間の中にある欲望?
もう一段深く考えると、タイトルが表しているのは人物そのものではなく、
誰の中にもある欲望
なのかもしれません。
1億円を拾った。
誰にも見られていない。
自分は金に困っている。
その時、本当に警察へ届けられるのか。
『藁にもすがる獣たち』は、観客にもその問いを向けています。
まとめ|「藁」は1億円、「獣」は金に追い詰められた人間たち
『藁にもすがる獣たち』というタイトルを整理すると、
藁=今の人生から逃げるためにすがる1億円。
獣たち=金を求めるうちに理性を失っていく人々。
と考えることができます。
しかも皮肉なのは、救いだと思った1億円が、実際には登場人物をさらに危険な場所へ引きずり込んでいくことです。
藁にすがったつもりが、その藁によって人間から獣へ変わってしまう。
そこにこのタイトルの面白さがあります。
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原作では、追い詰められた複数の人物が大金へ手を伸ばしていく心理がより詳しく描かれています。
