『ガス人間第一号』はどんな話?1960年版のあらすじ・正体・衝撃のラストを解説
※この記事には1960年公開の映画『ガス人間第一号』の結末までの重大なネタバレがあります。
Netflix『ガス人間』を見て、
「元になった昔の『ガス人間第一号』ってどんな話?」
と気になった人も多いと思います。
原作となった『ガス人間第一号』は、1960年12月11日に東宝が公開した特撮映画です。
監督は『ゴジラ』でも知られる本多猪四郎。
特技監督は円谷英二。
上映時間は91分です。
タイトルだけを見ると、怪人が暴れる昔の特撮映画に思えます。
しかし実際には、
密室犯罪ミステリー、SF、警察捜査、日本舞踊、そして悲恋
を組み合わせたかなり異色の作品です。
物語は不可解な銀行強盗から始まる
物語の主人公の一人が、警視庁の岡本警部補(三橋達也)です。
銀行強盗犯を追っていた岡本は、犯人を五日市街道で追跡します。
ところが犯人は、日本舞踊の家元・春日藤千代(八千草薫)の屋敷付近で忽然と姿を消してしまいます。
人間が普通に逃げただけでは説明できない消え方です。
岡本は新聞記者・甲野京子と事件を追う
岡本の恋人で新聞記者の甲野京子(佐多契子)も捜査へ協力します。
ここはNetflix版を見た人にはかなり驚くところです。
Netflix版にも、
岡本という刑事と甲野京子という記者
が登場します。
名前だけでなく職業まで旧作から引き継がれています。
『ガス人間』甲野京子は旧作にも登場する?1960年版とNetflix版の違いを解説
なぜ藤千代が疑われた?
藤千代は、伝統ある日本舞踊の家元です。
しかし流派は衰退し、経済的にも苦しい状態でした。
ところが突然、大金を手にするようになります。
離れていた弟子たちを呼び戻し、新作舞踊「情鬼」の発表会まで開こうとします。
その大金はどこから来たのか。
銀行強盗と藤千代につながりがあるのではないか。
岡本たちは疑いを強めます。
真犯人として名乗り出る男・水野
やがて警察は藤千代を共犯容疑で拘留します。
すると一人の青年が現れます。
図書館員の水野(土屋嘉男)です。
水野は、
銀行強盗の真犯人は自分だ
と名乗ります。
しかし普通の人間が犯行を行ったとは思えない状況でした。
水野の正体が「ガス人間」
水野は捜査陣の前で、自分の能力を実演します。
身体を自由に気体へ変えられるのです。
壁や狭い隙間も通り抜けられる。
だから銀行の密室へ侵入し、誰にも捕まらず逃げることができました。
この水野こそ、タイトルの
「ガス人間第一号」
です。
なぜ水野はガス人間になった?
Netflix版とは原因がまったく違います。
旧作の水野は、佐野博士による人体実験を受けました。
研究の目的は、宇宙旅行へ耐えられる人間を作ること。
しかし実験によって、水野は身体をガス化できる異形の存在になってしまいます。
もともと怪人だったわけではありません。
水野はなぜ人体実験を受けた?
水野は裕福な青年ではありません。
大学にも進めず、航空自衛隊のパイロットを目指したものの、体格面から夢を断たれています。
その後は図書館司書として働きながら、閉塞感を抱えていました。
そこで金を得るため、科学者の実験台になります。
そして人生そのものが変わってしまいます。
ガス人間になって水野の価値観も変わる
特殊能力を得た水野は、以前の弱い自分ではなくなります。
警察にも捕まらない。
鍵も壁も意味を持たない。
社会のルールから外れた存在になったことで、水野の中には人間社会への反発や優越感も生まれていきます。
なぜ銀行強盗をした?
水野が銀行から金を奪った最大の理由は、
藤千代をもう一度舞台へ立たせるため
です。
水野は藤千代を強く愛していました。
没落した藤千代の流派を再興し、彼女の舞踊を世間に認めさせたい。
そのためにガス人間の能力を使って金を奪い、藤千代へ渡していました。
つまり旧作は復讐劇ではない
Netflix版では、ガス人間が過去の事件への復讐に利用されます。
しかし旧作の水野は、ホワイトセンターのような組織へ復讐しているわけではありません。
犯罪の中心にあるのは、
藤千代への異常なまでの愛
です。
Netflix『ガス人間』と『ガス人間第一号』の違い|登場人物・設定・結末を比較
藤千代は水野を愛していた?
ここが旧作最大の謎の一つです。
水野は藤千代を愛しています。
しかし藤千代が水野を恋愛相手として愛していたのかは、映画の中で明確には言い切られません。
藤千代は水野の金を受け取り、舞踊家として再起します。
そして最終局面では水野と運命を共にします。
それでも本多猪四郎監督は、藤千代の気持ちを簡単な恋愛として確定しませんでした。
警察は水野をどう捕まえようとした?
ガスになれる水野へ、普通の手錠や牢屋は通用しません。
そこで警察は、藤千代の舞踊公演を利用して水野をおびき出します。
水野が藤千代の舞台へ来ることを見越した作戦です。
藤千代は罠だと知りながら舞台へ立つ
クライマックスでは、藤千代が新作「情鬼」を舞います。
水野もその舞台へ現れます。
警察にとってはガス人間を仕留めるための場所。
しかし藤千代にとっては、自分の芸を最後まで貫く場所でもありました。
衝撃のラスト|藤千代が火をつける
そして最後。
藤千代は自らライターで火をつけます。
ガス化している水野へ炎が引火。
水野は燃え上がります。
藤千代もその場に残り、2人はともに死を迎えます。
藤千代はなぜ一緒に死んだ?
「水野を愛していたから心中した」
と見ることもできます。
実際、水野役の土屋嘉男は、藤千代も水野を愛しているという解釈で演じていたとされています。
ただし本多猪四郎監督は、もう少し複雑に考えていました。
藤千代が死を選んだのは単純な恋愛感情だけでなく、
彼女自身がそうするしかない運命へ追い詰められた
という趣旨の見方を語っています。
最後に残るのは焼け焦げた藤千代の衣装
水野は焼け焦げた藤千代の衣装をつかんだまま絶命します。
そこへ花輪が落ちる演出が入ります。
怪人を倒して「めでたし」ではありません。
科学によって人間ではなくなった男と、時代から取り残された舞踊家。
2人の悲劇として終わります。
なぜ今でも評価されている?
本多猪四郎公式サイトでも、『ガス人間第一号』は単なるSF怪奇映画ではなく、
密室犯罪。
人体改造。
古典芸能。
悲恋。
を組み合わせた作品として評価されています。
ガス人間を「倒すべき怪物」にするだけでなく、
なぜその人間が怪物になったのか
まで描いているところが大きな特徴です。
Netflix版へ何が受け継がれた?
ストーリー自体は大きく変更されています。
しかし、
怪物にも人間だった過去がある。
ガス人間と女性の強い結びつき。
刑事・岡本。
記者・甲野京子。
人間社会から外れた存在の悲しさ。
こうした核はNetflix版にも受け継がれています。
Netflix版『ガス人間』は原作のどこを受け継いだ?1960年版との共通点を考察
旧作はNetflixでも見られる
現在、Netflixには1960年版『ガス人間第一号』の作品ページもあり、三橋達也、八千草薫、土屋嘉男らの出演作品として掲載されています。
Netflix版を見たあとに旧作を見ると、名前や構図の引用がかなり分かりやすくなります。
まとめ
1960年版『ガス人間第一号』は、銀行強盗事件を追う岡本警部補と新聞記者・甲野京子が、身体を自由に気体化できる図書館員・水野へたどり着く物語です。
水野は科学者の人体実験によってガス人間となり、その力を使って強盗を繰り返します。
しかし目的は単なる金ではありません。
愛する日本舞踊家・藤千代を再び舞台へ立たせるためでした。
そして最後は、藤千代自身が火をつけ、水野と運命を共にします。
怪人SFに見えて、実際には「人間ではなくなった男と、芸に生きる女の悲恋」。
これがNetflix版の原点となった『ガス人間第一号』です。
