実写映画『ルックバック』タイトルの意味を考察|なぜ「Look Back」なのか
※この記事には実写映画『ルックバック』のラストまでネタバレがあります。
『ルックバック』というタイトルは非常にシンプルです。
英語の「Look Back」をそのまま訳すと、
「振り返る」
「過去を回想する」
といった意味になります。
しかしこの作品では、それだけではありません。
漫画を描く二人の「背中」。
藤野が振り返る過去。
最後の4コマ。
そして原作に仕込まれた「Don’t Look Back in Anger」を思わせる言葉。
いくつもの意味が重なっています。
結論|「過去を振り返る」と「背中を見る」の二重の意味が作品全体にある
タイトルを理解するうえで、まず重要なのが、
look back=過去を振り返る。
という意味です。
物語後半の藤野は、京本との出会いから別れまでを何度も振り返ります。
もし漫画を描かなかったら。
もし京本を外へ出さなかったら。
もし二人が出会わなかったら。
まさに過去を振り返る物語です。
もう一つは「背中を見る」
「look back」は、作品内では「背中」という視覚的なモチーフとも重なっています。
『ルックバック』では、
漫画を描く人物の後ろ姿。
が何度も登場します。
机へ向かう藤野。
机へ向かう京本。
二人が並んで描く姿。
顔よりも背中で、創作に向き合う時間を見せています。
なぜ背中を映す?
漫画を描いている時、本人の表情は大きく動きません。
ただ机へ向かっています。
でも、その背中を見るだけで、
集中している。
悩んでいる。
必死に描いている。
時間を費やしている。
ことが伝わります。
特に実写版では、長い時間机へ向かう姿そのものが強く印象に残ります。
藤野は最初、京本の「背中」を追いかける
最初の藤野にとって京本はライバルです。
京本の圧倒的な画力を見て、
「追いつきたい」
と思います。
つまり比喩的には、京本の背中を追いかけている状態です。
京本にとっては藤野の背中が憧れ
ところが実際に二人が会うと、関係が逆転します。
京本は藤野の4コマ漫画の大ファンです。
京本から見ると、
藤野こそ自分が追いかけていた人。
なのです。
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二人は互いの背中を見て成長している
藤野は京本の絵に刺激を受けます。
京本は藤野の漫画に憧れます。
どちらか一方だけが先生ではありません。
互いの背中を見ながら、二人とも前へ進んでいく。
関係です。
京本を失った藤野が最後にすることも「振り返る」
京本の死後、藤野は過去を振り返ります。
二人が初めて会った日。
一緒に漫画を描いた日々。
それぞれの道へ進んだこと。
全部を振り返ります。
だから「Look Back」は、物語後半の藤野そのものを表しています。
ただし「過去に戻る」という意味ではない
ここが重要です。
藤野は過去を振り返ります。
しかし最後まで過去に閉じこもるわけではありません。
最終的には再び机へ向かいます。
つまり、
振り返ったあと、もう一度前を見る。
という物語です。
原作には「Don’t」と「In Anger」の仕掛けがある
原作漫画では、タイトルとは別に非常に有名な仕掛けがあります。
冒頭付近に、
「Don’t」
という文字。
そして終盤に、
「In Anger」
という文字が描かれています。
その間に作品タイトル「Look Back」を入れると、
Don’t Look Back in Anger
となります。
これはOasisの楽曲名と同じ
「Don’t Look Back in Anger」は、イギリスのロックバンドOasisの楽曲名です。
そのため原作では、
この楽曲タイトルを意識した仕掛けではないか。
と広く考察されています。
ただし、作者がタイトルの意味を一つだけに限定して公式に説明しているわけではありません。
そのため、
「タイトルの唯一の正解はOasis」
と断定するのは避けた方が正確です。
「怒りとともに振り返らない」という読み方
ここからは考察です。
藤野は京本を失ったあと、自分へ怒りを向けます。
なぜ漫画を描いた。
なぜ京本を外へ出した。
なぜあの時止めなかった。
その怒りと後悔を抱えながら過去を振り返ります。
しかし最後は、
自分を責めるためだけに過去を振り返るのをやめる。
ようにも見えます。
京本の死を「意味がなかったこと」にしない
もし藤野が、
「二人が出会ったこと自体が間違いだった」
と結論づければ、二人で過ごした時間まで否定することになります。
でも京本は藤野の漫画を好きでした。
藤野との出会いによって外へ出ました。
一緒に漫画を描きました。
自分の道も選びました。
その時間まで消す必要はありません。
最後の4コマとタイトルもつながる
作品終盤では4コマ漫画が再び重要になります。
二人の始まりが4コマ。
二人をもう一度つなぐものも4コマ。
その中でも「背中を見る」という意味がタイトルと重なります。
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実写版では「背中」がさらに生々しくなる
漫画では描かれた背中。
アニメでは動く背中。
実写版では、本物の人間が何時間も机へ座り、紙へ向かう姿になります。
是枝版では、手の動きやペンの音も丁寧に描かれています。
そのため、
創作する人の背中を見る。
というタイトルの意味が、実写ではより身体的に伝わります。
13年間を振り返る映画そのものが「Look Back」
実写版は、藤野と京本の小学生時代から約13年間を描いています。
つまり映画そのものが、
二人の人生を長い時間の中から振り返る構造。
になっています。
ここからは考察|「振り返る」と「進む」は反対ではない
普通は、
過去を見る。
前を見る。
は反対の行為に思えます。
しかし『ルックバック』では、
過去をきちんと振り返ったからこそ、藤野は再び前へ進めた。
ように描かれています。
だからタイトルは、
「過去を見るな」
ではありません。
「過去を見つめ直し、その意味を受け入れる」
ことに近いのではないでしょうか。
まとめ|タイトルは二人の過去・背中・創作すべてを表している
『ルックバック』というタイトルには、
過去を振り返る。
漫画を描く人の背中を見る。
互いの背中を追いかける藤野と京本。
京本との13年間を振り返る藤野。
「Don’t Look Back in Anger」を思わせる原作上の仕掛け。
といった複数の意味が重なっています。
一つに決める必要はありません。
むしろ、
過去を振り返りながら、それでも描くために前を向く。
という作品全体を表したタイトルだと考えると、最も自然です。
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