実写映画『ルックバック』ラストの意味|藤野はなぜ漫画を描き続けた?
※この記事には実写映画『ルックバック』のラストまで重大なネタバレがあります。
『ルックバック』の最後で、藤野は京本を失った悲しみを抱えながら、再び机へ向かいます。
そして漫画を描き始めます。
そこで気になるのが、
「あれだけ自分を責めていたのに、なぜまた描けたの?」
「京本の死を乗り越えたということ?」
という点です。
結論|京本との出会いを「間違いだった」と否定するのをやめたから
藤野が最後に漫画を描けた最大の理由は、
京本と出会ったことそのものが悪かったわけではない。
と気づいたからだと考えられます。
京本が亡くなった直後、藤野は、
「自分が漫画を描かなければ」
「自分が京本を外へ連れ出さなければ」
と考えます。
つまり二人が出会ったすべての時間まで否定しようとします。
藤野は「原因」を自分の中に探してしまった
突然大切な人を失うと、人は理由を探します。
なぜあの日だったのか。
なぜそこへ行ったのか。
なぜ自分は止められなかったのか。
藤野も同じです。
事件そのものを止められなかった以上、過去をさかのぼり、
「そもそも二人が出会わなければ」
というところまで戻ってしまいます。
でも「出会わなければよかった」は本当なのか
もし二人が出会わなければ。
京本は部屋から出なかったかもしれない。
美大へも進まなかったかもしれない。
事件にも遭わなかったかもしれない。
しかし同時に、
藤野と一緒に漫画を描くこともなかった。
外の世界へ出る喜びもなかった。
自分の絵を誰かと作品にする経験もなかった。
可能性があります。
別世界の場面が見せる「もしも」
終盤では、二人が小学生の時に出会わなかった可能性が描かれます。
京本は別の道を進みます。
そして藤野とも別の形で関わります。
この場面を、
本当のパラレルワールド。
と見ることもできます。
また、
藤野が心の中で作った「やり直したい世界」。
と考えることもできます。
▶ 実写映画『ルックバック』別世界のような場面は何?パラレルワールドなのか考察
重要なのは「本当に別世界か」だけではない
映画は、この場面を物理的なSFとして説明しません。
重要なのは、藤野が、
「京本が死なない人生があったら」
と強く願っていることです。
失った人を思えば、誰でも一度は考える、
「もしあの時」
を映像として見せた場面とも考えられます。
藤野は京本の部屋へ戻る
最終的に藤野は、京本が亡くなった現実へ戻ります。
そして京本の部屋を見ます。
そこには、藤野の漫画を読んできた京本の時間が残っています。
京本にとって藤野との出会いは大切だった
藤野は、
「自分が京本を外へ出したせいで死なせた」
と考えました。
しかし京本自身は、藤野の漫画が大好きでした。
藤野に出会ったことを後悔していたわけではありません。
二人で漫画を描いた時間も、京本の人生の一部です。
4コマ漫画が藤野へ返ってくる意味
二人の始まりも4コマ。
最後も4コマ。
藤野と京本は、最初から最後まで漫画によってつながっています。
言葉で、
「あなたと出会えてよかった」
と説明する代わりに、漫画そのものが二人の関係を伝えています。
▶ 実写映画『ルックバック』4コマ漫画の意味|ドアの下から出てきた紙は何だった?
だから藤野は漫画を捨てられなかった
漫画を描くことが京本を死なせたのではありません。
漫画があったからこそ、
二人は出会った。
友達になった。
一緒に仕事をした。
夢を見た。
藤野が漫画まで捨てれば、
京本と過ごした時間まで「間違いだった」と否定することになる。
とも考えられます。
最後に机へ戻るのは「忘れた」からではない
藤野は京本の死を忘れていません。
乗り越えて完全に平気になったわけでもありません。
むしろ京本を思い出しながら描きます。
だからラストは、
「悲しみが終わった」
場面ではなく、
「悲しみと一緒に生き始めた」
場面と考えた方が自然です。
「描く理由」は途中で何度も変わっている
藤野が漫画を描く理由は、最初から同じではありません。
最初は、
みんなに褒められたい。
次は、
京本に負けたくない。
その後は、
京本と一緒に作品を作りたい。
そして最後には、
京本との時間を抱えたまま、自分自身が描き続ける。
というところへ変わります。
是枝版では「描く行為そのもの」がより強調される
実写版では、漫画を描く手。
紙をこするペンの音。
机へ向かい続ける時間。
そうしたものが丁寧に描かれています。
海外報道でも、鉛筆やペンの音からデジタル作画の音へ変わっていくことが、二人の成長を示す重要な演出として注目されています。
ラストの「背中」にも意味がある
『ルックバック』には、漫画を描いている人物を後ろから捉える場面が何度もあります。
顔ではなく、机へ向かう背中。
最後の藤野もまた、描く人の背中として存在します。
その背中には、京本と過ごした時間も含まれています。
タイトル「Look Back」とラストはつながっている
「Look Back」は、
振り返る。
という意味です。
藤野は京本との過去を徹底的に振り返ります。
しかし最後は、振り返ったまま立ち止まりません。
もう一度机へ向き直ります。
つまり、
振り返ることと、前へ進むことが両立している。
ラストです。
ここからは考察|創作は京本を取り戻すためではない
漫画を描いても京本は戻りません。
事件も消えません。
だから創作がすべてを解決するという話ではありません。
それでも描くことで、藤野は京本と過ごした時間を自分の中に残すことができます。
つまり創作は、
失った人を復活させるものではなく、その人と生きた時間を持ち続ける方法。
として描かれているのではないでしょうか。
まとめ|藤野は「京本と出会った人生」を選び直した
ラストの意味を整理すると、
京本の死で藤野は自分を責める。
二人が出会わなかった別の可能性を考える。
しかし出会ったことで生まれた大切な時間も思い出す。
京本自身が藤野の漫画を愛していたことを知る。
二人の出会いまで否定するのをやめる。
藤野は再び漫画を描く。
という流れです。
藤野が最後に選んだのは、
「京本を失わない別の人生」ではなく、「京本と出会ったこの人生を抱えたまま生きること」。
なのだと考えられます。
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