『星を編む』タイトルの意味を考察|なぜ“星を編む”なのか?
※この記事には、『汝、星のごとく』『星を編む』の内容に触れるネタバレがあります。
凪良ゆうさんの『星を編む』を読み終えると、気になるのがタイトルの意味です。
なぜ「星を見る」でも「星をつなぐ」でもなく、「星を編む」なのでしょうか。
表題作「星を編む」では、櫂の才能を支える編集者たちが描かれます。
一方、本全体を見ると、北原先生、櫂、暁海、編集者たちなど、さまざまな人物の人生が少しずつつながっています。
結論からいうと、
「星」は一人ひとりの人間や才能。
「編む」は、それぞれ別々の人生を関係によってつないでいくこと。
と考えると、作品全体が分かりやすくなります。
この記事では、『星を編む』というタイトルの意味を、3編の物語と『汝、星のごとく』とのつながりから考察します。
結論|「星を編む」は一人ひとりの人生をつなぐこと
ここからはタイトルについての考察です。
『星を編む』には、強く輝く一人の主人公だけがいるわけではありません。
北原先生。
櫂。
暁海。
編集者たち。
それぞれに人生があります。
それぞれが一つの「星」だとすれば、
その星と星を、人との関係によって編んでいく。
それが『星を編む』というタイトルなのではないでしょうか。
表題作では「才能という星」を編集者が輝かせる
タイトルの意味を最も直接的に感じられるのが、2編目の表題作です。
そこでは、漫画原作者・作家となった櫂を担当する編集者たちが描かれます。
櫂には才能があります。
しかし、才能だけでは本は完成しません。
原稿を受け取る人。
作家と話す人。
企画を通す人。
本として形にする人。
読者へ届ける人。
多くの人が関わります。
才能という星を見つけ、それが輝ける形へ整えていく。
編集者の仕事は、まさに「星を編む」ことのように見えます。
「編む」は一人ではできない
「書く」は一人でもできます。
「見る」も一人でできます。
しかし「編む」には、複数のものが必要です。
糸が一本だけでは、布にはなりません。
いくつもの糸を重ね、交差させることで、一つの形になります。
『星を編む』も同じです。
一人の人生だけではなく、
複数の人生が交差することで一つの物語になる。
「編む」という言葉には、そのイメージがあります。
『汝、星のごとく』の「星」とつながっている
前作のタイトルは『汝、星のごとく』です。
続編でも「星」という言葉が引き継がれています。
前作では、櫂と暁海という二人の人生が強く描かれました。
続編では、その二人だけではなく、
二人を支えた人。
二人から影響を受けた人。
二人がいなくなったあとも生きる人。
まで物語が広がります。
一つ一つの星を見る物語から、
星同士の関係を編んでいく物語
へ変わったとも考えられます。
「春に翔ぶ」では北原先生の人生が編み込まれる
『汝、星のごとく』で北原先生は、櫂と暁海を支える人物でした。
しかし続編「春に翔ぶ」では、北原先生自身にも過去があることが描かれます。
それまで主人公を支える脇役に見えていた人物にも、
自分自身の一つの人生がある。
その人生が『汝、星のごとく』の物語へ編み込まれていきます。
表題作では櫂の人生が別の人の人生へ編み込まれる
櫂は亡くなります。
しかし櫂が残した作品は消えません。
編集者。
読者。
暁海。
櫂と関わった人の中へ残ります。
つまり、櫂という一つの人生は、死によって完全に途切れるのではなく、
別の人の人生の中へ編み込まれていく
とも考えられます。
▶ 『星を編む』櫂は死後どう描かれる?残された作品と編集者たちを解説
「波を渡る」では過去と未来が編まれていく
暁海は櫂との時間を忘れません。
しかし、人生を止めるわけでもありません。
北原先生との時間。
家族との時間。
仕事。
年齢を重ねていく人生。
そうした現在と未来の中に、櫂との過去も残っています。
過去を切り捨てるのではなく、これからの人生へ編み込んでいく。
それも「星を編む」という言葉に重なります。
なぜ「星をつなぐ」ではなく「編む」なのか
ここも考察です。
「つなぐ」なら、AとBを一本の線で結ぶイメージです。
しかし「編む」はもっと複雑です。
何本もの糸が交差します。
一度だけではなく、何度も重なります。
『星を編む』の人間関係も同じです。
北原先生と暁海。
櫂と暁海。
櫂と編集者。
北原先生と教え子。
さまざまな関係が重なります。
だから、単純な「つなぐ」よりも、
「編む」という言葉の方が、この作品には合っている
ように感じられます。
人は誰かとの関係の中で一つの物語になる
『星を編む』では、一人だけで完成している人物はほとんどいません。
誰かに助けられる。
誰かを助ける。
誰かを愛する。
誰かに愛される。
誰かが残したものを受け取る。
その関係によって、その人の人生も変わります。
一人ひとりは別々の星。
でも、
関係が生まれた瞬間に、一つの物語として編まれていく。
それが続編全体に流れる感覚です。
タイトルは編集者だけではなく3編すべてを表している
表題作だけを見ると、
「星=櫂の才能」「編む=編集者の仕事」
と考えられます。
しかし本全体を見ると、意味はもっと広がります。
北原先生の過去。
櫂が残した作品。
暁海のその後。
それぞれ別の時間にある物語が、一冊の中でつながっています。
だから『星を編む』は、表題作だけではなく、
3編全体を表すタイトル
でもあると思います。
『汝、星のごとく』と『星を編む』を並べると意味が深くなる
汝、星のごとく。
一人ひとりが、それぞれの場所で輝く星のように見えます。
星を編む。
その星たちを、人との関係でつないでいく。
この二つのタイトルを並べると、
「個人の人生」から「人生と人生のつながり」へ物語が広がった
ようにも見えます。
まとめ|『星を編む』は「人と人の人生を編む」という意味にも読める
『星を編む』というタイトルには、いくつもの意味を重ねることができます。
櫂の才能という星を、編集者が作品へ編んでいく。
北原先生の過去を、本編の物語へ編み込む。
櫂が残したものを、未来へ編み込む。
暁海が過去の愛を抱えたまま、新しい人生を編んでいく。
一人ひとりは別々の星です。
しかし、人は一人だけで生きているわけではありません。
出会い。
別れ。
仕事。
家族。
愛。
その一つ一つによって、人生同士がつながります。
その星々を一つの物語へ「編む」。
それが『星を編む』というタイトルの大きな意味なのではないでしょうか。
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『星を編む』を実際に読んでみたい方へ
この記事ではタイトルの意味を中心に考察しました。
3編を通して読むと、「星を編む」という言葉が編集者の仕事だけでなく、登場人物たちの人生そのものにも重なって見えてきます。
