『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースはなぜ記憶喪失だった?宇宙船で目覚めた理由を解説
※この記事には映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』最大級のネタバレである、グレースが宇宙へ行った経緯について触れています。
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の冒頭。
ライランド・グレースは宇宙船の中で目覚めます。
しかし、
自分の名前すら覚えていません。
なぜ宇宙にいるのか。
何をするために来たのか。
一緒にいた人は誰なのか。
すべて分からない状態です。
なぜグレースは記憶喪失になっていたのでしょうか。
結論|長期航行の人工冬眠に加え、ストラットに記憶へ影響する薬を使われていた
グレースの記憶喪失には、
ヘイル・メアリー号での長期航行のための昏睡。
そして物語後半で明かされる、
グレースをミッションへ送り出す際に使われた薬。
が関係しています。
だから目覚めた直後のグレースは、自分の任務だけでなく、
自分がなぜ宇宙船へ乗せられたのかという最も重要な記憶
まで失っています。
グレースは長い間眠っていた
地球からタウ・セチまでは、非常に長い距離があります。
ヘイル・メアリー号の乗組員は、航行中の大部分を、
医学的に管理された昏睡状態
で過ごします。
なぜ起きたまま行かない?
何年にも及ぶ宇宙航行を、狭い宇宙船の中で過ごす。
精神的にも肉体的にも大きな負担になります。
そこで長期間眠った状態で移動する計画が採用されます。
誰でも長期昏睡に耐えられるわけではない
このミッションでは、
長期昏睡へ耐えられる可能性が高い遺伝的特徴
を持つ人物が重要になります。
グレースもその条件を持っていました。
グレースはもともとの宇宙飛行士候補ではなかった
ここが大きなポイントです。
グレースは、最初からヘイル・メアリー号へ乗る科学担当として準備されていたわけではありません。
彼はプロジェクトに参加する研究者ではあっても、
宇宙へ行く本来の科学担当は別にいました。
しかし事故によって予定が変わる
出発前に重大な事故が発生。
本来ミッションへ参加する科学担当者とバックアップ候補を失います。
そこで、アストロファージを熟知し、さらに昏睡へ耐えられる条件を持つグレースが候補になります。
グレースは自分から「行きます」と言った?
いいえ。
ここが映画最大の人物的なひねりの一つです。
グレースは、人類を救うために自ら進んで宇宙へ行った英雄ではありませんでした。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースは自分から宇宙へ行った?ストラットとの過去を解説
グレースは宇宙へ行くことを拒否する
ヘイル・メアリー計画は、非常に危険なミッションです。
地球へ戻れる保証もありません。
グレースは、
死ぬのが怖い。
だから行きたくない。
と拒否します。
ストラットはそれでもグレースを行かせる
プロジェクト責任者のエヴァ・ストラットにとって、最優先は、
人類が生き残ること。
です。
グレース本人の希望より、人類全体の生存を優先します。
グレースは強制的にミッションへ送られる
最終的にグレースは、本人の意思に反してヘイル・メアリー号へ乗せられます。
映画でも、このストラットとグレースの最後の対立は非常に重要な場面です。
記憶を失わせる薬が使われる
ストラットはグレースへ薬を使い、宇宙船へ乗せます。
その結果、タウ・セチ到着後に目覚めたグレースは、
出発直前の出来事を含む記憶を失っています。
だから最初は「自分は英雄だった」と思える
記憶が少しずつ戻ると、グレースは、
地球が危機にある。
自分がタウ・セチへ来た。
人類を救う任務だ。
と理解します。
普通に考えれば「自分は志願した」と思う
人類を救うための決死のミッション。
自分がその船にいる。
なら、
自分は勇気を出して参加したのだろう。
と思うのが自然です。
ロッキーもグレースを勇敢な人物だと思う
ロッキーも、自分の文明を救うため宇宙へ来ています。
そのためグレースも同じように、自ら使命を背負った人物だと考えます。
でもグレース本人には違和感が残る
記憶が戻るほど、説明できない空白があります。
そして最終的に、
自分は自発的に来たのではなかった。
という記憶へたどり着きます。
この記憶が戻る場面が重要な理由
単に、
「なぜ記憶喪失だったのか」
を説明するためだけではありません。
グレースという人物の見方を大きく変えます。
グレースは最初から完璧な英雄ではなかった
もし最初から、
「人類のためなら命を捨てます」
と志願していたなら、典型的な英雄です。
でもグレースは違います。
怖かった。
死にたくなかった。
逃げたかった。
その弱さがあるから最後の決断が意味を持つ
物語の最後、グレースはロッキーを助けるため地球への帰還を捨てます。
今度は誰にも強制されません。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースはなぜロッキーを助けに戻った?最後の決断を考察
最初は強制、最後は自分で選ぶ
物語冒頭につながる過去では、
ストラットに強制されて宇宙へ行く。
物語の最後では、
自分の意思で危険な道へ戻る。
正反対です。
記憶喪失は物語の仕掛けとしても機能している
観客はグレースと同じ順番で真実を知ります。
自分は誰?
なぜ宇宙にいる?
地球で何が起きた?
なぜ自分が選ばれた?
一つずつ謎が解けます。
観客もグレースを「英雄」だと思わされる
そして最後に、
実は本人は行きたくなかった。
と分かります。
この構成によって、その後のグレースの成長がより強く見えるようになります。
記憶喪失は事故だったの?
単なる頭部外傷や偶然の病気ではありません。
長期昏睡と、出発時に使われた薬が関係する、
ミッションそのものと結びついた記憶障害
です。
ストラットはなぜそこまでした?
ストラットの立場からすれば、グレース一人の自由より、
地球上の人類全体の生存
を優先します。
その判断が正しかったのかは、作品の大きな倫理的テーマでもあります。
まとめ|グレースの記憶喪失には「強制された宇宙行き」が隠されていた
グレースが宇宙船で目覚めた時に記憶を失っていたのは、
長距離航行のため長期間昏睡していたこと。
そして、
ストラットが本人の意思に反してミッションへ送る際、記憶へ影響する薬を使ったこと。
が関係しています。
だからグレース自身も、物語の後半まで、
「自分は人類を救うため自ら志願した」
と思い込む余地がありました。
しかし真実は違う。
彼は怖くて拒否した。
それでも最後には、自分の意思でロッキーを助けるため命を懸けます。
記憶喪失の真相は、グレースが最初から英雄だったのではなく、物語の中で英雄になっていったことを示す仕掛け
でもあるのです。
グレースが宇宙へ送られた真相を原作で読みたい方へ
ストラットとの最後の対立や、グレースが自分の過去を思い出していく過程は原作でも大きな転換点です。
