『キングダム』壁は実在した?「壁将軍」は本当にいたのか史料から解説
『キングダム』で信(しん)たちを何度も助け、少しずつ将軍へ成長していく壁(へき)。
圧倒的な天才というより、真面目さと努力で戦場を生き抜く人物として人気があります。
「壁は本当に実在した?」「『史記』に壁将軍が出てくるって本当?」「成蟜の反乱で死んだという話は?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
壁については、ほかの実在人物より少し複雑です。
結論から言うと、『史記』には「将軍壁死」という文章がありますが、これを「壁という名前の将軍が死んだ」と読むかどうかには解釈上の問題があります。
そのため、「壁将軍が実在した」と単純に断定するのは避けた方が安全です。
壁は実在した?
王翦(おうせん)や羌瘣(きょうかい)、楊端和(ようたんわ)のように、「壁」という将軍の詳しい戦歴が史料に何度も登場するわけではありません。
問題となるのが、『史記・秦始皇本紀』の秦王政8年の記述です。
成蟜(せいきょう)が趙(ちょう)への出陣中に反乱したことを記した部分に、「将軍壁死」という文章があります。
この「壁」を人名と取るか、それとも「城壁・陣営の中」といった意味で読むかによって解釈が変わります。
「将軍壁死」は「壁将軍が死んだ」という意味?
日本語だけを見ると、
「将軍・壁、死す」
と読めそうです。
そのため、「史実にも壁という将軍がいた」と紹介されることがあります。
しかし、『史記』の古い注釈では「壁」を人名ではなく、陣営・壁塁を意味する言葉として解釈しています。
つまり、「成蟜が陣営の中で死んだ」という意味に読む解釈があります。
この読み方なら、「壁」という将軍はこの文章には登場していないことになります。
なぜ壁将軍実在説が広まった?
「将軍壁死」という漢文は、区切り方によって意味が大きく変わって見えます。
句読点のない古典中国語では、どこで文章を区切るのかが非常に重要です。
そこで、
- 「将軍・壁、死す」=壁という将軍が死んだ
- 「将軍、壁に死す」=将軍が陣営内で死んだ
という違いが生まれます。
ただし『史記正義』などの注釈では、後者に近い解釈が示されています。
そのため、史料上の「壁」を確実な人物名として扱うには慎重さが必要です。
『キングダム』作者は「壁」を人物にした?
『キングダム』には、昌文君(しょうぶんくん)の側近として壁という人物が登場します。
史料にある「将軍壁死」という非常に短い表現から着想を得た可能性は考えられますが、どこまでを直接のモデルとしているかは、この記事では断定しません。
少なくとも作品の壁については、家柄、性格、信との関係、戦歴など多くの部分が物語として作られています。
『キングダム』の壁はどんな人物?
壁は、物語序盤から昌文君と行動する秦の武官です。
信や嬴政(えいせい)とも王都奪還の頃から関わり、その後は戦場で経験を積んでいきます。
『キングダム』には王騎(おうき)や王翦、蒙武(もうぶ)のような規格外の大将軍が数多く登場します。
その中で壁は、突出した才能だけで進むのではなく、地道に経験を積みながら昇進していく人物として描かれています。
そこが壁の大きな魅力です。
壁は本当に将軍になる?
『キングダム』では壁は戦功を重ね、将軍へ昇進します。
しかし史実で「壁という人物が秦の将軍として昇進した」という明確な記録は確認できません。
そのため、壁の詳しい軍歴は作品独自のものとして見るのが適切です。
成蟜の反乱で史実の壁は死んだ?
ここもよく検索される疑問です。
「将軍壁死」を「壁将軍が死んだ」と読めば、秦王政8年の成蟜の反乱に関連して壁が死亡したように見えます。
しかし先ほど触れたように、古い注釈では「壁」を人名とは取っていません。
したがって、
「史実の壁将軍は成蟜の反乱で死亡した」と断定することはできません。
ここはインターネット上でも誤解されやすいポイントです。
なぜ『キングダム』の壁は成蟜の反乱後も生きている?
「史記では壁が死んでいるのに、なぜ漫画では生きているの?」という疑問もあります。
しかし前提となる「史記の壁=人物名」が確定しているわけではありません。
そのため、漫画が史実を無視して壁を生存させていると単純に考える必要はありません。
そもそも原文の解釈自体に問題があるためです。
壁は完全な架空人物なの?
これも断定は難しいところです。
「壁」という名前の秦将が確実に実在したと証明できる史料は乏しい一方、『史記』の問題の文章が存在します。
したがって、
「史実上の壁将軍が確実に実在した」とも、「完全な架空人物」とも簡単には言い切らない
のが最も慎重な整理です。
壁について分かっていることを整理
- 『史記』に「将軍壁死」という文章がある → 事実
- 「壁」が人名かどうか → 解釈に注意が必要
- 古い注釈では「壁」を陣営・壁塁の意味で解釈している
- 「壁将軍が成蟜の乱で死んだ」と断定するのは危険
- 『キングダム』の壁の詳しい人物像 → 作品独自の要素が大きい
壁を原作で最初から読みたい方へ
壁は物語の序盤から登場し、信や嬴政とともに多くの戦いを経験していきます。
規格外の天才たちが多い『キングダム』の中で、努力と経験を積み重ねて昇進していく壁は少し珍しい存在です。
まとめ
『キングダム』の壁については、「実在した」と単純に断定するのは注意が必要です。
『史記』には確かに「将軍壁死」という文章があります。
しかし古い注釈では「壁」を人名ではなく、陣営や壁塁を意味する言葉として解釈しています。
そのため、「壁という将軍が史実に存在し、成蟜の反乱で死亡した」と確定しているわけではありません。
史料のわずかな表現とその解釈から生まれた、ほかの『キングダム』登場人物とは少し違った面白さを持つキャラクターです。
