『オデュッセイア』最後はどうなった?オデュッセウスの帰還とラストを解説
※この記事には映画『オデュッセイア』のラスト、求婚者との戦い、オデュッセウス・ペネロペ・テレマコスの結末まで重大なネタバレがあります。
『オデュッセイア』を見終わったあと、
「結局オデュッセウスはイタカに残ったの?」
「最後にまた船で出ていったのはなぜ?」
「テレマコスが王になったということ?」
と気になった方もいるのではないでしょうか。
映画版のラストは、ホメロスの原典とはかなり意味の違う結末になっています。
結論|オデュッセウスは帰還するが、王位をテレマコスへ譲って再び旅立つ
オデュッセウスは10年に及ぶ航海の末、故郷イタカへ戻ります。
宮殿を占拠していた求婚者たちを倒し、妻ペネロペとも再会します。
ここまでは、
「ようやく王が戻ってきた」
という展開です。
ところが映画版では、オデュッセウスはそのまま王へ復帰しません。
王位を息子テレマコスへ譲り、自らイタカを離れます。
そしてペネロペもオデュッセウスとともに旅立ちます。
イタカへ戻ったオデュッセウスはなぜ変装した?
オデュッセウスが故郷へ戻った時、宮殿はすでに以前の状態ではありません。
大勢の求婚者がペネロペとの結婚を狙い、王宮を事実上占拠しています。
オデュッセウスが生きていると分かれば、敵はすぐに行動します。
そこで彼は正体を隠し、情報を集めます。
▶ 『オデュッセイア』なぜ変装して故郷へ戻った?妻にも正体を明かさなかった理由
アルゴスだけはオデュッセウスに気づく
長い年月によって人々には分からなくなったオデュッセウス。
しかし老犬アルゴスは主人を見抜きます。
20年間待ち続けたアルゴスは、主人の帰還を確認したあと命を終えます。
オデュッセウスにとって、
「本当に家へ帰ってきた」
ことを最初に示す存在が犬なのです。
▶ 『オデュッセイア』犬はなぜオデュッセウスに気づいた?アルゴスの場面が意味するもの
ペネロペは求婚者へ弓の試練を出す
ペネロペは求婚者たちに、オデュッセウスの弓を使った試練を課します。
しかし誰も弓を扱うことができません。
そこで正体を隠していたオデュッセウスが弓を手にします。
オデュッセウスは難なく弓を張り、試練を成功させます。
これは単なる力比べではありません。
この男こそ本当のイタカ王である。
ことを示す瞬間です。
▶ 『オデュッセイア』弓の試練とは?なぜ求婚者たちは弓を引けなかったのか
オデュッセウスとテレマコスが求婚者たちと戦う
正体を現したオデュッセウスは、息子テレマコスとともに戦います。
アンティノオスをはじめとする求婚者たちは倒されます。
これによって宮殿は奪還されます。
なぜ求婚者を殺した?
求婚者たちは単にペネロペへ求婚していただけではありません。
オデュッセウスの家へ入り込み、財産を消費し、息子テレマコスまで排除しようとしていました。
オデュッセウスから見れば、
家族と王国を奪おうとした敵。
です。
▶ 『オデュッセイア』求婚者たちはなぜ殺された?オデュッセウスが皆殺しにした理由
これでハッピーエンドではない
普通の英雄譚なら、
王が帰還。
敵を倒す。
妻と再会。
王座へ戻る。
これで終わりそうです。
しかしノーラン版は、そこからもう一段先へ進みます。
オデュッセウスは自分の過去と向き合う
オデュッセウスはトロイア戦争を勝利へ導いた英雄です。
しかし同時に、トロイを焼き、多くの人間を死なせました。
自分の部下も帰還の途中で全員失っています。
家へ戻ったからといって、それらがなかったことにはなりません。
映画版で重要な「海の民」の意味
映画では「海から現れ、文明を滅ぼす者たち」のイメージが繰り返されます。
終盤、オデュッセウスは、
本当に恐ろしい存在は自分たちだったのではないか。
と考えるようになります。
トロイを攻め落としたギリシャ軍自身が、別の土地から見れば「海からやって来た破壊者」だった。
この認識がラストの選択につながります。
なぜオデュッセウスは王にならなかった?
ここからは考察を含みます。
オデュッセウスには王へ戻る力があります。
求婚者も倒しました。
しかし、自分が再び権力を持つことが本当にイタカのためになるのか。
彼は疑問を持ったのではないでしょうか。
戦争を起こし、破壊を経験した古い世代。
ではなく、
これから国を作る新しい世代。
へ任せる。
その役割を担うのがテレマコスです。
テレマコスが新しい王になる
テレマコスは物語の初めでは、父を待つ若者でした。
しかし父について知ろうとし、自分でも行動し、最後には父と並んで戦います。
そしてラストでは、父から王国を引き継ぎます。
これは、
父の時代が終わり、息子の時代が始まった。
ことを意味します。
ペネロペはどうなる?
映画版ではペネロペもイタカへ残りません。
夫オデュッセウスとともに旅へ出ます。
20年間離れていた夫婦が、ようやく同じ道を歩き始める。
そう考えると、単なる別れの結末ではありません。
原典ではどう終わる?
ホメロスの『オデュッセイア』では、映画と同じ結末ではありません。
原典ではオデュッセウスは王としてイタカへ復帰します。
さらに求婚者たちの遺族との対立が起こりますが、最終的にはアテナの介入によって争いが収束します。
映画版の、
「王位を息子へ渡して、自分は去る」
という結末はノーラン版独自の大きな変更です。
▶ 映画『オデュッセイア』と原典の違いは?ホメロスの叙事詩から変更された点を比較
ラストの意味|帰郷がゴールではなく「自分の行いを理解すること」がゴール
ここからは考察です。
オデュッセウスは物語のほとんどを、
「家へ帰る」
ために使っています。
しかし最後に必要だったのは、家へ着くことだけではありません。
自分が何をしてきたのか。
誰を失ったのか。
戦争によって何を壊したのか。
そこまで理解して、初めて本当の旅が終わります。
なぜ最後に再び旅立つのか?
オデュッセウスは家へ帰るために10年旅しました。
そして帰った直後にまた旅立つ。
一見矛盾しているように見えます。
しかし最初の旅は、
「家へ戻るための旅」。
最後の旅は、
「自分の過去と向き合ったうえで、次へ進む旅」。
なのではないでしょうか。
まとめ|オデュッセウスは帰還したが、王として居座らなかった
ラストを整理すると、
オデュッセウスはイタカへ帰還。
変装して宮殿へ入る。
弓の試練を成功させる。
テレマコスとともに求婚者たちを倒す。
ペネロペと再会。
しかし王位には戻らない。
テレマコスが新しいイタカ王になる。
オデュッセウスはペネロペと再び旅立つ。
という結末です。
ノーラン版の『オデュッセイア』は、
「英雄が勝って王座へ戻る話」
ではなく、
「英雄が自分の過去を理解し、次の世代へ場所を譲る話」
として終わっているのです。
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『オデュッセイア』を原典でも読みたい方へ
映画版とは異なるオデュッセウスの帰還や、ペネロペとの再会、その後のイタカまで詳しく知りたい方は、ホメロスの原典『オデュッセイア』もおすすめです。
『オデュッセイア』上巻
『オデュッセイア』下巻
特に故郷イタカへ帰還してからの変装、弓の試練、求婚者との対決、ペネロペとの再会は下巻でじっくり読むことができます。
