※この記事には映画『オデュッセイア』のトロイア戦争、トロイの木馬、オデュッセウスの帰還についてネタバレがあります。

『オデュッセイア』を見ると、物語の出発点として登場するのが、

トロイの木馬。

です。

巨大な木馬の中に兵士が隠れる。

トロイの人々が城内へ運び込む。

夜になると兵士たちが出てきて、トロイを陥落させる。

非常に有名な作戦ですが、

「これはオデュッセウスが考えたの?」

「『オデュッセイア』本編はトロイア戦争の話なの?」

という点は少し複雑です。

結論|木馬を作ったのはエペイオス、策略の中心人物がオデュッセウス

ホメロスの『オデュッセイア』では、木馬について、

エペイオス(えぺいおす)がアテナの助けを受けて作った。

と語られています。

そして、

その木馬を策略としてトロイへ持ち込み、中に兵士を隠した中心人物がオデュッセウス。

です。

したがって、

「木馬そのものをオデュッセウスが作った」

という説明は正確ではありません。

そもそもトロイア戦争とは?

トロイア戦争は、ギリシャ側とトロイ側が戦った伝説上の大戦争です。

物語上の大きなきっかけになるのが、スパルタ王メネラオスの妻ヘレネがトロイの王子パリスとともにトロイへ渡ったことです。

これを受け、ギリシャ各地の王や英雄がトロイへ集結します。

オデュッセウスもその一人です。

戦争は約10年間続いた

ギリシャ軍はトロイを簡単には落とせません。

戦争は約10年間続きます。

正面から攻めても城を攻略できない。

そこで最後に使われるのが木馬の策略です。

木馬はどういう作戦?

ギリシャ軍は巨大な木馬を残し、

「自分たちは撤退した」

ように見せます。

木馬は女神アテナへ捧げられたものだとトロイ側に思わせます。

そしてトロイの人々は、自ら木馬を城壁の中へ運び込みます。

しかし木馬の中には兵士がいた

木馬は贈り物ではありません。

内部にはオデュッセウスをはじめとするギリシャ兵が隠れています。

トロイの人々が眠ったあと、兵士たちは木馬から出ます。

そして城門を開き、外へ戻っていたギリシャ軍を城内へ入れます。

なぜこんな作戦が成功した?

10年も戦争を続けていたギリシャ軍が突然いなくなる。

そこに巨大な神への奉納物が残されている。

トロイ側は、

「ついに戦争に勝った」

と考えます。

つまり木馬は、武器というより、

相手に自分から城門を開けさせる心理戦。

です。

原典『オデュッセイア』では戦争そのものはすでに終わっている

ここは重要です。

ホメロスの『オデュッセイア』本編は、

トロイア戦争が終わった後の物語。

です。

つまり原典を開くと、最初から木馬作戦が長々と描かれるわけではありません。

木馬の話は回想として語られる

原典では、木馬の出来事は複数の人物によって過去の話として語られます。

特に第8巻では、吟遊詩人デモドコスが木馬の物語を歌います。

そこで、

エペイオスがアテナの助けで木馬を作った。

オデュッセウスが兵士を中に入れ、策略としてトロイへ持ち込んだ。

ことが語られます。

つまり「木馬はオデュッセイアの前日譚」

時系列では、

トロイア戦争

トロイの木馬

トロイ陥落

オデュッセウスがイタカへ向けて出発

『オデュッセイア』の帰還の旅

という順番です。

ノーラン版映画では木馬を大きく映像化

クリストファー・ノーラン版では、この原典の「過去の出来事」を映画の重要な場面として映像化しています。

巨大な木馬。

トロイの城。

木馬内部の兵士。

そしてトロイ陥落。

原典では断片的に語られる出来事を、映画では観客が実際に体験するような形で見せています。

映画版ではシノンも重要

映画版ではシノン(しのん)という人物が木馬作戦へ深く関わります。

彼はトロイ側を欺くため危険な役目を負います。

そして映画のオデュッセウスは、その作戦によってシノンを犠牲にしたことへの罪悪感を抱き続けます。

シノンはノーランが完全に作った人物?

いいえ。

シノンという人物自体は古代のトロイ戦争伝承に存在します。

特にウェルギリウスの『アエネーイス』では、木馬をトロイ側へ信用させる人物として詳しく描かれます。

ただしホメロスの『オデュッセイア』では、映画のような中心的役割では描かれていません。

映画はなぜ木馬作戦を強く描いた?

ここからは考察です。

木馬はオデュッセウスの最大の成功です。

10年間落とせなかったトロイを、知恵で落とした。

普通なら、

「さすが知恵の英雄」

という場面です。

しかし映画は、その成功によって何万人もの人間が死んだことも強調します。

オデュッセウスの「英雄」と「加害者」が同時に始まる

木馬作戦は軍事的には大成功です。

しかしトロイ側から見れば、

街を滅ぼした最悪の策略。

です。

ノーラン版では、ここからオデュッセウスの長い罪悪感が始まります。

だから帰還の旅も単なる冒険ではない

オデュッセウスは怪物と戦います。

嵐に遭います。

仲間を失います。

しかし映画版では、その根底に、

「自分は戦争で何をしたのか」

という問いがあります。

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トロイを落としたのに、なぜすぐ帰れなかった?

戦争が終われば旅も終わると思えます。

しかし実際には、ここからさらに約10年。

ポリュペモス。

キルケ。

セイレーン。

スキュラ。

カリュプソ。

など、数多くの試練が待っています。

▶ 『オデュッセイア』なぜ10年も帰れなかった?オデュッセウスの旅を時系列で解説

トロイア戦争を知らないと映画は難しい?

すべての神話を知っておく必要はありません。

最低限、

オデュッセウスはギリシャ側。

10年間トロイと戦った。

木馬の策略によってトロイが陥落。

そこから妻と息子が待つイタカへ帰る。

これだけ押さえれば十分です。

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まとめ|木馬を作ったのはエペイオス、策略の中心がオデュッセウス

整理すると、

トロイア戦争は約10年間続いた。

エペイオスがアテナの助けを受けて木馬を作った。

オデュッセウスが木馬を利用する策略の中心となった。

木馬の中に兵士が隠れた。

トロイ側が木馬を自ら城内へ入れた。

夜に兵士が出てトロイを陥落させた。

そこからオデュッセウスの帰還の旅が始まる。

という流れです。

つまりトロイの木馬は、

『オデュッセイア』の冒険が始まる前に起きた、オデュッセウス最大の勝利であり、同時に映画版では彼の罪悪感の出発点。

でもあります。


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『オデュッセイア』を原典でも読みたい方へ

映画で大きく描かれたトロイの木馬は、ホメロスの原典では過去の出来事として複数回語られます。木馬とオデュッセウスの関係から、その後の長い航海まで追いたい方は原典もおすすめです。

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