『九条の大罪』なぜ法廷シーンが少ない?接見室を中心に描く理由を考察
※この記事には、Netflixシリーズ『九条の大罪』の内容に触れるネタバレがあります。
『九条の大罪』は弁護士が主人公のドラマです。
それなのに、一般的な弁護士ドラマと比べて法廷で裁判する場面がかなり少ないことに気づいた方もいるのではないでしょうか。
九条間人(柳楽優弥)や烏丸真司(松村北斗)が活躍する場所は、華やかな法廷よりも、留置施設の接見室や法律事務所、裏社会の人間たちが集まる場所です。
これは偶然ではありません。
Netflix公式の制作ノートでも、本作では「あえて法廷シーンをほとんど入れず、接見室をメインにした」と制作意図が明かされています。
では、なぜ弁護士ドラマなのに法廷を描かなかったのでしょうか。
『九条の大罪』は法廷ドラマではない
弁護士を主人公にした作品では、裁判官や検察官を相手に弁護士が逆転する法廷シーンが大きな見せ場になることがよくあります。
しかし『九条の大罪』が描こうとしているのは、裁判で勝つ瞬間だけではありません。
事件が起きてから裁判へ進むまでの間に、弁護士が依頼人と何を話し、どのような判断をするのか。
その過程に重点が置かれています。
制作側が「接見室をメイン」と明言している
Netflix公式の制作秘話では、本作について、
「法廷シーン」はほとんどなく、「接見室」のシーンがメイン
だと説明されています。
理由として挙げられているのが、弁護士たちが専門用語を使って合理的に会話する中で、どうしても抜け落ちてしまう「感情」の問題を描くことです。
接見室とは何をする場所?
接見室は、身体を拘束されている被疑者・被告人と弁護士が面会する場所です。
『九条の大罪』では、この閉ざされた部屋で九条と依頼人が向き合う場面が何度も登場します。
そこでは、
「何を話すのか」
「黙秘するのか」
「どう弁護するのか」
といった、その後の刑事手続きを左右する会話が行われます。
法廷より接見室の方が九条という人物を描きやすい
法廷では、弁護士は裁判官や検察官に向かって話します。
しかし接見室では、九条と依頼人がほぼ一対一で向き合います。
そこで九条がどのような言葉をかけるのか。
依頼人の犯罪に対して感情を見せるのか。
どこまで弁護士として割り切るのか。
こうした九条の人間性を描くには、法廷よりも接見室の方が適しています。
「カンモク」「20日でパイ」も接見室で生きる
『九条の大罪』を象徴する「カンモク」「20日でパイ」といった言葉も、裁判が始まる前の刑事弁護で重要になります。
逮捕後に何を話すのか。
黙秘するのか。
起訴される前の限られた期間をどう戦うのか。
この攻防を描くため、接見室が大きな舞台になります。
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裁判より前に勝負が決まる事件もある
刑事事件のすべてが裁判になるわけではありません。
捜査の結果、検察官が不起訴と判断すれば公判は開かれません。
『九条の大罪』では、起訴される前の段階でどのように依頼人を守るのかが重要になります。
そのため、法廷に入る前の弁護士活動を描くこと自体が作品のテーマに合っています。
九条の「グレーさ」は法廷外でこそ見えてくる
法廷では刑事訴訟のルールが比較的明確です。
しかし九条が活動するのは、法律と裏社会が接触する境界のような場所です。
壬生憲剛(町田啓太)のように裏社会とつながる人物から依頼が持ち込まれ、逮捕された人物に接見し、どう動くべきか考える。
この法廷の外側にあるグレーな世界こそ、『九条の大罪』が描きたい場所なのだと考えられます。
法廷で「正解」を出さないためでもある?
ここからは考察です。
法廷ドラマでは、裁判の結果によって勝ち負けが明確になりやすくなります。
無罪を勝ち取れば主人公の勝ち。
有罪なら負け。
しかし『九条の大罪』が描く問題は、それほど単純ではありません。
依頼人を釈放させたことが、社会的にも正しいとは限らない。
犯罪者を刑務所へ送ったからといって、すべてが解決するとも限りません。
法廷を物語のゴールにしないことで、視聴者に「本当にこれでよかったのか」という疑問を残す構造になっているのではないでしょうか。
合理的な会話の中から「感情」が漏れ出す
Netflix公式が挙げている重要なキーワードが「感情」です。
弁護士は合理的に事件を処理しようとします。
しかし依頼人は人間です。
被害者にも家族がいます。
弁護士自身にも感情があります。
専門用語だけで処理しようとしたとき、そこからこぼれ落ちてしまうものがある。
その矛盾を、狭い接見室で人物の表情や沈黙を使って描いています。
テロップ解説もあえて少なくしている
接見室中心の構成と同じく、本作では法律用語についても説明しすぎない作りになっています。
Netflix公式によると、日本独自の法律制度を大量の文字で説明すると、世界配信作品として日本人にしか分からないドラマになってしまう懸念がありました。
そこで「説明」よりも「間」を重視しています。
分からない言葉があっても、登場人物の表情や状況を見ることで少しずつ意味が分かる。
この演出も『九条の大罪』独特のリアリティにつながっています。
原作者からのリクエストは『探偵物語』のようなユーモア
Netflix公式の制作秘話によると、原作者・真鍋昌平さんから実写化にあたって求められたのは、松田優作さんの『探偵物語』のようなユーモアだったとされています。
ハードな裏社会や刑事事件だけを重く描くのではなく、ときどきクスッと笑える「間」を入れる。
接見室での会話劇が多いからこそ、こうした独特のテンポも生きています。
烏丸との会話も接見室中心だから際立つ
九条と烏丸は、同じ弁護士でも考え方が違います。
法廷で同じ敵と戦うバディというより、事件への向き合い方そのものについて意見をぶつけ合う2人です。
だからこそ、派手な逆転裁判より、事務所や接見室での会話の方が2人の違いを描きやすくなっています。
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まとめ|法廷ではなく「その前」を描く弁護士ドラマ
『九条の大罪』に法廷シーンが少ないのは、制作側が意図的に選んだ構成です。
中心になるのは接見室。
そこで合理的な法律用語を交わす弁護士と依頼人の間から、法律だけでは処理できない感情が見えてきます。
裁判で勝つか負けるかではなく、弁護士が誰をどこまで守るのか。
その問いを描くために、『九条の大罪』は一般的な法廷ドラマとはまったく違う場所を物語の中心に置いているのです。
『九条の大罪』を原作漫画で読みたい方へ
原作漫画でも、法廷の逆転劇より、九条と依頼人の会話や刑事事件の現実的な手続きが重要になります。
Netflix版との演出の違いを比較して読むのもおすすめです。
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