※この記事には『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の科学設定についてネタバレがあります。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を見ると、

「これってどこまで本当の科学なの?」

と気になる場面が次々に出てきます。

人工重力。

相対性理論。

星間航行。

異星生命。

そして、太陽のエネルギーを吸収するアストロファージ。

非常にリアルに説明されるため、すべて実現可能な科学のようにも見えます。

しかし実際には、

現実の科学をかなり忠実に使った部分と、物語を成立させるための完全な架空設定

が混ざっています。

結論|物理学はかなり現実寄り。ただしアストロファージなど物語の核には大きなSF設定がある

大きく分けると、

重力・軌道・加速度・相対論など。

→ 現実の科学をかなり重視。

アストロファージ。

タウメーバ。

エリド人の特殊な生化学。

→ 架空のSF設定。

です。

原作者アンディ・ウィアー自身も、アストロファージには物語を成立させるための大きな「奇跡」が含まれていることを認めています。

アンディ・ウィアーは科学的正確さをかなり重視している

ウィアーは『オデッセイ』でも、実在する科学や技術をできるだけ使って物語を作りました。

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』でも同じです。

まず一つ大きな架空設定を置く。

そして、

「もしそれが本当に存在したら、その後は現実の科学でどうなる?」

と考えて物語を組み立てています。

科学監修も行われている

原作段階から天文学・宇宙物理学などについて専門家の協力を受けています。

映画制作でもNASA/JPLなど科学者との交流が行われ、科学的な台詞の確認もされています。

映画撮影中も科学的におかしい台詞を修正

映画では俳優のアドリブもあります。

しかし科学的な単位などが間違っていた場合、ウィアーが確認して修正することもあったと語っています。

ではアストロファージは本当に存在する?

存在は確認されていません。

アストロファージは作品のために作られた架空の生命体です。

▶ アストロファージとは何?なぜ恒星のエネルギーを奪うのかをわかりやすく解説

アストロファージの最も非現実的な部分は?

最大のポイントは、

極端に大量のエネルギーを小さな細胞内へ安全に蓄えられること。

です。

しかも、ほぼ完璧に近い効率でエネルギーを利用できます。

現実にそんな生物がいたら革命どころではない

もしアストロファージのようなものが本当に存在すれば、

エネルギー問題。

宇宙開発。

輸送。

発電。

あらゆる技術が変わります。

星間宇宙船の燃料に使えるのもアストロファージのおかげ

現代の化学ロケットでは、11.9光年先へ人間を短期間で送ることは現実的ではありません。

ヘイル・メアリー号がタウ・セチへ行けるのは、

アストロファージという超高密度エネルギー源があるから。

です。

つまり宇宙船の物理は真面目でも「燃料」がSF

ここが分かりやすいポイントです。

加速。

減速。

時間。

相対性理論。

などは現実の物理をできるだけ使う。

しかし、それを可能にする燃料だけは架空。

船の加速で人工重力を作るのは本当?

原理として本当です。

宇宙船が一定の加速度で加速していれば、船内の人には床へ押し付けられる力が働きます。

地球の重力と似た感覚を作れます。

これは「重力を発生させる装置」ではない

SFでよくある謎の重力発生装置ではありません。

加速度を重力のように利用している。

だけです。

船を回転させて人工重力を作るのも現実の物理

宇宙船の一部を回転させれば、遠心効果によって人を外側へ押し付けることができます。

これを人工重力として利用する考え方は、現実の宇宙開発でも以前から研究されています。

▶ ヘイル・メアリー号とはどんな宇宙船?目的・乗組員・航行方法を解説

相対性理論の時間差も本当?

本当です。

光速に近い速度で移動すると、移動している側と静止している側では時間の進み方が変わります。

これは特殊相対性理論による現実の物理現象です。

「宇宙旅行した人だけ若い」はSFだけの話ではない

速度が十分大きければ時間差は実際に生じます。

ただし現代の宇宙船の速度では、その差は物語ほど大きくありません。

エリド人が相対性理論を知らない設定はあり得る?

ここはSF的な文明設定です。

科学技術は必ずしもすべての文明で同じ順番に発展するとは限りません。

別の惑星環境なら、地球では当たり前の発見が遅れる可能性もあります。

ロッキーの「目がない」は科学的にあり得る?

十分あり得る発想です。

地球にも、視覚をほとんど使わず音や振動を利用して周囲を把握する生物がいます。

ロッキーはそれを非常に高度に発達させた生物として設定されています。

▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ロッキーはなぜ目がない?エリド人の体の仕組みを解説

科学者からもロッキーの非人間的な姿は評価されている

SF映画では、宇宙人が人間そっくりの姿をしていることがよくあります。

しかし別の惑星で独立して進化したなら、

人間と同じ二本脚・二本腕・目・鼻・口になる必然性はありません。

ロッキーはその点で、かなり思い切った異星生命体です。

エリドの高温・高圧環境はあり得る?

高温・高圧の惑星そのものは十分あり得ます。

実際、太陽系でも金星は地球とはまったく異なる高温・高圧環境です。

では200℃を超える知的生命は本当に存在できる?

現時点では分かりません。

地球生命の生化学をそのまま使えば非常に難しい。

しかしエリド生命は地球とは異なる化学体系を持つという設定です。

タウメーバは現実に存在する?

これも架空です。

ただし、

ある生物が増えすぎると、それを食べる捕食者によって数が抑えられる

という生態系の考え方は現実のものです。

アストロファージに天敵がいるという発想は自然

もしアストロファージが長い時間宇宙で繁殖してきたなら、

それを利用する別の生命体が進化しても不思議ではありません。

▶ タウメーバとは何?アストロファージを食べる生物と弱点を解説

タウメーバを選択育種する考え方は現実的

少し高い窒素濃度へ置く。

生き残った個体を増やす。

さらに条件を厳しくする。

このように、

環境に強い個体を選び続ける

考え方自体は現実の生物学にあります。

ただし進化速度は物語向けにかなり都合がいい

タウメーバの世代交代が非常に速いという設定によって、短期間で必要な性質を得られるようにしています。

この部分はSF的な設定が強いところです。

長期昏睡は現実にできる?

映画のような数年間の人工昏睡は、現在実用化されていません。

人間を何年も安全に眠らせ、筋肉や臓器を維持し、正常に目覚めさせる技術はまだありません。

だから「コールドスリープ」もSF部分

ヘイル・メアリー号の長期航行を成立させるために必要な架空技術の一つです。

ただし映画は無重力表現にもかなり気を使っている

映画制作ではNASAの宇宙飛行士から、微小重力環境で人間がどう動くのかについて助言を受けています。

単にワイヤーで浮かせればいい、という作りにはしていません。

この作品は「全部本当」だからリアルなのではない

ここが重要です。

アストロファージは架空。

エリド人も架空。

タウメーバも架空。

それでもリアルに感じます。

一つの架空設定を置いた後、できるだけ物理法則を守る

アンディ・ウィアー作品の特徴は、

「魔法で解決しない」

ことです。

問題が起きれば、現在分かっている科学を使って解決しようとします。

科学的に間違う場面も物語の一部

グレースはいつも一発で正解するわけではありません。

仮説が外れる。

実験が失敗する。

予想外の変異が起こる。

だからまた考える。

そこが現実の科学に近い

科学は、天才が突然すべてを理解するものではありません。

証拠を集め。

試し。

間違いを修正する。

その姿勢が本作のリアリティを作っています。

まとめ|科学の土台はかなり本物。でも物語を動かす核心はSF

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の科学を整理すると、

加速度による人工重力。

回転による人工重力。

相対性理論。

軌道や恒星の観測。

などは、現実の物理学をかなり重視しています。

一方で、

アストロファージ。

タウメーバ。

長期人工昏睡。

エリド生命の詳細。

などはフィクションです。

つまり、

「全部現実にできるSF」ではありません。

しかし架空の前提を置いたあと、できるだけ現実の科学で問題を解こうとしている。

その積み重ねが、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を非常にリアルに感じさせているのです。


科学設定をもっと詳しく読みたい方へ

映画では短縮された計算や実験、グレースが答えへたどり着くまでの思考は原作でかなり詳しく描かれています。

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