『沈黙のパレード』殺害方法を解説|蓮沼はどうやって殺された?
※この記事には映画『沈黙のパレード』の蓮沼寛一殺害方法、犯人、事件の真相まで重大なネタバレがあります。
映画『沈黙のパレード』で特に分かりにくいのが、
「蓮沼は結局どうやって殺されたの?」
という部分です。
蓮沼寛一(はすぬま・かんいち)の遺体には、首を絞められたような目立った外傷がありません。
それなのに死因として疑われたのは窒息。
さらに血液からは睡眠薬も検出されます。
湯川学(ゆかわ・まなぶ)がたどり着いたのは、
液体窒素を使って部屋の酸素濃度を低下させる方法
でした。
結論|蓮沼は液体窒素による酸素欠乏で死亡した
蓮沼がいたのは、増村栄治(ますむら・えいじ)の家にある狭い物置のような部屋です。
犯行では、そこへ液体窒素を送り込みます。
液体窒素は気化すると大量の窒素ガスになります。
狭い部屋の中で窒素の割合が増えると、そのぶん酸素濃度が下がります。
その結果、蓮沼は十分に呼吸できなくなり、酸素欠乏によって死亡しました。
なぜ首を絞めた跡がなかった?
普通の窒息殺人を考えると、
首を絞める。
口や鼻をふさぐ。
といった方法を想像します。
しかし蓮沼には、そのような分かりやすい痕跡がありませんでした。
そこで湯川は、
「蓮沼の身体ではなく、部屋の空気そのものに仕掛けがあったのではないか」
と考えます。
湯川が注目したのは狭い部屋
蓮沼が使っていた部屋は、もともと広い居室ではありません。
物置のような狭い空間でした。
狭ければ、部屋全体の空気の状態を変えるために必要な窒素の量も少なくなります。
この部屋の構造がトリックを成立させる重要な条件でした。
蓮沼の血液から睡眠薬が検出された
もう一つの重要な手がかりが睡眠薬です。
蓮沼は犯行前に眠らされていました。
その役割を担ったのが、蓮沼を自宅に住まわせていた増村です。
増村なら、蓮沼の飲み物などに睡眠薬を混ぜる機会があります。
増村はなぜ計画に協力した?
増村は単なる蓮沼の知人ではありません。
過去の本橋優奈(もとはし・ゆうな)事件と深いつながりを持つ人物です。
そのため増村にも、蓮沼を憎む強い理由がありました。
表面上は蓮沼を自宅へ迎え入れながら、裏では町の人々の計画へ加わっていたのです。
引き戸の取っ手が重要だった
蓮沼が眠ったあと、部屋は外側から閉じられます。
そして引き戸の取っ手部分の金具を外し、そこに穴を作ります。
この穴が、液体窒素を部屋へ送り込むための入口になります。
つまり犯人は、蓮沼と同じ部屋へ入る必要がありません。
液体窒素はどこから用意した?
液体窒素を用意できたのが、冷凍食品会社を営む戸島修作(とじま・しゅうさく)です。
捜査では、戸島の会社から約20リットルの液体窒素が減っていたことが分かります。
ここから警察は、液体窒素が犯行に使われた可能性を強く疑います。
でも戸島にはアリバイがあった
液体窒素を入手できる。
蓮沼を憎んでいる。
それだけなら戸島が最有力容疑者になりそうです。
しかし戸島にはパレード当日のアリバイがありました。
ここで湯川は、
「液体窒素を用意した人物と、実際に使った人物は別なのではないか」
と考えます。
液体窒素は複数人で運ばれた
町の人たちは、パレードを利用して液体窒素を運びます。
一人が最初から最後まで持ち運ぶのではありません。
複数の人物がそれぞれ短い区間だけ担当します。
そのため、一人ひとりにはパレードへ参加していたというアリバイが残ります。
パレードの宝箱も利用された
液体窒素の容器をそのまま持ち歩けば目立ちます。
そこでパレードで使われる宝箱などの道具を利用します。
祭りの最中なら、大きな道具を運んでいても不自然ではありません。
華やかなパレードそのものが、犯行準備を隠すためのカモフラージュになっていました。
▶ 『沈黙のパレード』パレードの日に何が起きた?蓮沼死亡までを時系列で整理
では町の人たちは最初から蓮沼を殺す計画だった?
ここは重要です。
映画で明らかになる当初の計画は、
蓮沼を液体窒素で呼吸困難に追い込み、佐織殺害について真実を話させること。
でした。
つまり液体窒素を使うこと自体は危険な計画ですが、少なくとも全員が最初から「その場で蓮沼を確実に殺す」という同じ認識だったわけではありません。
本来の実行役は並木祐太朗
最後に蓮沼と対峙する予定だったのは、佐織の父・並木祐太朗(なみき・ゆうたろう)です。
蓮沼を苦しめながら、
「佐織に何をしたのか話せ」
と迫る計画でした。
しかし祐太朗が店を離れられなくなる
パレード当日、「なみきや」の客が腹痛を訴えます。
祐太朗はその対応で病院へ付き添うことになり、予定どおり動けません。
計画はいったん中止になるはずでした。
実はその腹痛も直紀が仕組んでいた
終盤で明らかになるのが、客の体調不良が偶然ではなかったことです。
新倉直紀(にいくら・なおき)が女性を使い、祐太朗が動けない状況を意図的に作っていました。
直紀は最初から、祐太朗の代わりに自分が蓮沼と対峙できる状況を作ろうとしていたのです。
実際に液体窒素を流し続けたのは新倉直紀
直紀は町の人々の計画を利用します。
そして蓮沼の部屋へ液体窒素を送り込みます。
直紀は後に、途中で気が変わったという趣旨の説明をします。
しかし湯川は、その説明に疑問を持ちます。
直紀は最初から蓮沼を殺すつもりだった
湯川がたどり着いたのは、
直紀は偶然蓮沼を死なせたのではなく、最初から殺意を持って計画を乗っ取った。
という真相です。
その理由は妻・新倉留美(にいくら・るみ)にありました。
蓮沼は留美を脅していた
留美は佐織が失踪した日、自分が佐織を突き飛ばしています。
佐織が動かなくなったため、留美は自分が殺したと思い込んでいました。
蓮沼はその秘密を利用して留美を脅していました。
直紀は妻を蓮沼から解放するため、蓮沼を殺すことを決意したと考えられます。
「殺すつもりはなかった」では済まない理由
直紀が単に計画を引き継ぎ、加減を誤って死亡させただけなら、殺意の有無が大きな問題になります。
しかし、
祐太朗を意図的に足止めする。
自分が実行役になる。
蓮沼を死亡させる。
その後、蓮沼が佐織殺害を自白したという話まで作る。
という流れを見ると、湯川は直紀の行動を偶発的なものとは考えません。
なぜ直紀は「蓮沼が佐織殺害を自白した」と言った?
妻・留美を守るためです。
蓮沼が佐織を殺したと認めたことになれば、留美は佐織殺害の犯人ではありません。
そのため直紀は、蓮沼の死だけでなく佐織事件まで一緒に終わらせようとします。
ところが佐織事件にはさらに別の真相があった
湯川の推理では、留美が佐織を突き飛ばした時点では、佐織はまだ死亡していませんでした。
その後、蓮沼が佐織を運び出し、意識を取り戻した佐織へ致命傷を与えた可能性が高いと考えられます。
つまり直紀は、
妻が犯していなかった殺人を隠すために、自分が殺人を犯してしまった。
ことになります。
まとめ|液体窒素による酸素欠乏が蓮沼の死因
蓮沼殺害方法を整理すると、
①増村が蓮沼に睡眠薬を飲ませる。
②蓮沼を狭い部屋で眠らせ、外から閉じ込める。
③引き戸の取っ手部分を外し、液体窒素を流せる状態にする。
④戸島が用意した液体窒素を複数人で運ぶ。
⑤本来は祐太朗が蓮沼を追及する予定だった。
⑥直紀が祐太朗を足止めし、自分が実行役になる。
⑦直紀が液体窒素を送り込み、蓮沼を酸素欠乏で死亡させる。
という仕組みです。
犯行方法そのものだけでなく、
「町の共同計画を、直紀が自分の殺人計画へ変えてしまった」
ところが『沈黙のパレード』最大の仕掛けです。
関連記事
▶ 『沈黙のパレード』町の人たちは何をした?蓮沼殺害計画を時系列で解説
▶ 『沈黙のパレード』犯人は誰?蓮沼寛一を殺した人物と事件の真相を解説
▶ 『沈黙のパレード』パレードの日に何が起きた?蓮沼死亡までを時系列で整理
『沈黙のパレード』を原作でも読みたい方へ
映画を見て、液体窒素を使った計画や登場人物それぞれの役割をさらに詳しく知りたい方は、東野圭吾さんの原作小説『沈黙のパレード』もおすすめです。
ガリレオシリーズの新刊『永遠の記憶』もチェック
『沈黙のパレード』をきっかけにガリレオシリーズをもっと読みたい方は、新刊『永遠の記憶』もあわせてチェックしてみてください。
