ヘイル・メアリー号とはどんな宇宙船?目的・乗組員・航行方法を解説
※この記事には映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の宇宙船やミッション設定についてネタバレがあります。
映画の大部分でグレースが過ごす宇宙船、
ヘイル・メアリー号。
見た目はSF的な宇宙船ですが、その設計には物語上の理由があります。
何を目的に作られた船なのか。
どうやって11.9光年先のタウ・セチまで飛んだのか。
なぜ船が回転するのか。
ここではヘイル・メアリー号の仕組みを整理します。
結論|ヘイル・メアリー号は人類最後の希望としてタウ・セチへ送られた星間宇宙船
ヘイル・メアリー号の目的は、
タウ・セチだけがアストロファージによる減光を免れている理由を調べること。
です。
そこで解決策を発見し、
地球へ情報とサンプルを送り返す。
そのために建造されました。
なぜタウ・セチへ行く?
アストロファージによる恒星の減光は太陽だけの問題ではありません。
近隣の多くの恒星で同じ現象が起きています。
しかし、
タウ・セチだけは大きな影響を受けていない。
そこで、
タウ・セチにはアストロファージを抑える何かがあるのではないか
と考えます。
地球からタウ・セチまで約11.9光年
非常に遠い距離です。
通常の宇宙船では、人間の寿命の中で到達すること自体が難しい。
そのためヘイル・メアリー号には、従来とは比較にならない推進方法が必要になります。
燃料はアストロファージ
そこで利用されるのが、皮肉にも地球を滅亡へ向かわせている、
アストロファージそのもの。
です。
アストロファージは大量のエネルギーを蓄えられる
アストロファージは恒星からエネルギーを吸収し、内部へ非常に高密度で蓄えます。
この性質を利用すれば、
極めて高性能な宇宙船燃料
として使えます。
▶ アストロファージとは何?なぜ恒星のエネルギーを奪うのかをわかりやすく解説
地球を苦しめる生物が地球を救う燃料になる
ここが本作らしいところです。
アストロファージは人類の敵。
しかし同時に、
人類が初めて星間航行を可能にする技術
にもなります。
ヘイル・メアリー号は普通のロケットとは違う
化学燃料を燃焼して加速するだけではありません。
アストロファージに蓄えた膨大なエネルギーを利用し、長期間加速します。
なぜ船内に人工重力がある?
映画では、グレースが船内で普通に床へ立っている場面があります。
しかし宇宙には地球の重力がありません。
加速中は加速度によって「重力のような力」が生まれる
船が一定方向へ加速している間は、
加速度によって乗組員が床へ押し付けられます。
そのため、地球に近い重力環境を作れます。
エンジンを止めると無重力になる
ところが目的地へ近づき、加速や減速が終わると、船内は無重力になります。
グレースはこの状態に苦労します。
そこで船を回転させる
ヘイル・メアリー号には、
船体を分けて回転させる遠心式の人工重力システム
があります。
船を巨大な遠心分離機のように回し、外向きの力を人工重力として利用します。
なぜそんな複雑な仕組みを入れた?
科学実験の多くは、地球と同じ重力条件で行うことを前提に設計されています。
未知のアストロファージを研究するのに、
無重力による余計な変化まで加わると実験結果が分かりにくくなる。
そこで1Gに近い環境を作れるよう設計されています。
ヘイル・メアリー号の乗組員は3人
本来のミッションでは、
3人の専門家
が搭乗します。
グレースを含む3人で、それぞれの専門分野を分担する計画です。
なぜ一人だけではダメ?
何光年も離れた場所では、地球へ電話して相談できません。
科学。
工学。
船の運用。
さまざまな問題を現地で解決する必要があります。
しかしグレースだけが生き残る
長期航行中に他の2人が死亡。
グレースだけが目覚めます。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』他の乗組員2人はなぜ死んだ?グレースだけ生き残った理由
長距離移動中は乗組員を昏睡させる
ヘイル・メアリー号は何年も宇宙を飛びます。
その間、乗組員は医学的な昏睡状態で過ごします。
船には自動生命維持装置がある
昏睡中の乗組員を、
監視。
栄養管理。
医療管理。
する自動システムが備わっています。
グレースが目覚めた時にも機械が対応します。
船内には大規模な研究設備もある
目的は単なる移動ではありません。
タウ・セチで原因を調べる必要があります。
そのため船内には、
生物学・化学・物理実験を行える研究室
が用意されています。
ヘイル・メアリー号は「研究所ごと宇宙へ飛ばした船」
地球へサンプルを持ち帰って分析する時間はありません。
現地で発見。
現地で分析。
現地で解決策を作る。
必要があります。
地球へはどうやって結果を送る?
地球へ直接高速通信しても、11.9光年離れています。
しかも最終的な解決策が、単なるデータではなく生命体のサンプルになる可能性もあります。
そこで「ビートル」と呼ばれる探査機を使う
ヘイル・メアリー号には、
地球へ帰還する小型無人探査機
が搭載されています。
グレースは最終的に、この探査機へタウメーバと研究成果を載せて地球へ送ります。
つまりヘイル・メアリー号自体は帰還が絶対条件ではない
このミッションの最優先事項は、
乗組員を地球へ帰すことではありません。
人類を救う答えを地球へ届けること。
です。
だから「ヘイル・メアリー」という名前が付いている
成功確率は分からない。
乗組員が帰れる保証もない。
それでも人類が生き残るためにはやるしかない。
まさに、
最後の一か八かの賭け。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』タイトルの意味は?“Hail Mary”が示す「最後の賭け」を解説
ロッキーの船とは設計思想が違う
タウ・セチで出会うロッキーの宇宙船は、エリド人の科学技術で作られています。
同じ目的地へ来たのに、
地球船とエリド船では構造や技術がまったく違います。
それぞれの文明の得意分野が船に表れている
人類は理論物理や電子機器などに強い。
エリド人は材料工学や構造設計に非常に強い。
二隻を比べることで、二つの文明の違いも見えてきます。
まとめ|ヘイル・メアリー号は「帰る船」より「答えを見つける船」
ヘイル・メアリー号は、
タウ・セチへ向かう星間宇宙船。
燃料はアストロファージ。
3人の乗組員を長期昏睡で運ぶ。
人工重力を作る遠心式構造を持つ。
船内に研究設備を備える。
地球へ成果を送り返す無人探査機を搭載する。
という船です。
最大の特徴は、
「乗組員が無事帰ること」より、「人類を救う答えを見つけること」が優先されている
点です。
だからヘイル・メアリー号は、単なる宇宙船ではありません。
人類が残された科学と技術をすべて詰め込み、最後の可能性へ向けて飛ばした巨大な実験室
なのです。
ヘイル・メアリー号の仕組みを原作で詳しく読みたい方へ
船体を回転させて人工重力を作る仕組みや、アストロファージエンジン、船内研究設備については原作でさらに詳しく描かれています。
