※この記事は映画『真夏の方程式』の犯人、殺害方法、恭平が事件へ巻き込まれた理由まで重大なネタバレを含みます。

『真夏の方程式』で最も後味が重い部分の一つが、

なぜ川畑重治(かわばた・しげはる)は、子どもの恭平(きょうへい)を殺人事件へ巻き込んだのか。

という点です。

重治は川畑成実(かわばた・なるみ)を守るため、元刑事・塚原正次(つかはら・まさつぐ)の殺害を計画します。

しかし犯行には、旅館の屋上にある煙突を塞ぐ作業が必要でした。

そこで利用されたのが恭平です。

なぜ自分でやらなかったのでしょうか。

そして、なぜ何も知らない子どもを使う必要があったのでしょうか。

結論|重治自身では煙突へ上がれなかったから

最も直接的な理由は、

重治は足が悪く、自分で煙突のある屋上へ上がることが難しかったから。

です。

塚原を一酸化炭素中毒で死亡させるには、ボイラーの排気を正常に外へ逃がさない状態を作る必要があります。

そのために煙突を塞ぐ。

しかし重治自身には難しい。

そこで、身軽な恭平へ頼みます。

ただし恭平には本当の目的を教えていない

当然、重治は、

「人を殺したいから煙突を塞いでくれ」

とは言いません。

利用したのが、

花火。

です。

ロケット花火が旅館の中へ入ったら危ない。

だから開口部を塞いでおこう。

そう説明すれば、恭平は不審に思いません。

その流れで煙突も濡れた段ボールで塞がせます。

▶ 『真夏の方程式』花火にはどんな意味がある?恭平と事件をつなぐ重要シーンを解説

重治はなぜ塚原を殺したかった?

すべての始まりは、川畑家の過去です。

塚原は元刑事。

過去に三宅伸子(みやけ・のぶこ)が死亡した事件を担当し、仙波英俊(せんば・ひでとし)を逮捕していました。

しかし仙波は本当の犯人ではありません。

実際に事件を起こしたのは成実。

仙波は成実を守るため、罪を背負いました。

▶ 『真夏の方程式』成実の過去とは?事件との関係・家族の秘密を解説

塚原が真相へ近づいたことで重治は焦る

年月がたち、塚原は過去の事件へ疑問を持ちます。

仙波は本当に犯人だったのか。

誰かをかばったのではないか。

そして玻璃ヶ浦(はりがうら)へやって来ます。

緑岩荘で仙波の名前まで出す。

重治から見れば、

成実の秘密が暴かれる寸前。

です。

そこで塚原を止めようと考えます。

▶ 『真夏の方程式』塚原はなぜ玻璃ヶ浦に来た?元刑事が調べていたこととは

重治は家族にも犯行を知られたくなかった

重治が単独で動いた理由も重要です。

成実を守るための犯行なので、成実本人へ相談するわけにはいきません。

節子(せつこ)を巻き込むことも避けたい。

湯川学(ゆかわ・まなぶ)が旅館にいる以上、不自然な行動もできません。

つまり重治は、

家族にも知られず、自分の身体ではできない作業を誰かにさせる必要があった。

ことになります。

その場にいた恭平が都合のいい存在になってしまった

恭平は子どもです。

大人の複雑な事情を知りません。

伯父に頼まれれば、普通に手伝います。

しかも屋上へ上がれる。

重治からすれば、殺害計画の意味を知らないまま作業してくれる存在です。

非常に残酷ですが、

だからこそ恭平が利用された。

と考えられます。

恭平を「共犯者」にしたかったわけではない

重治が、恭平にも罪を背負わせたいと思っていたわけではありません。

むしろ恭平には何も分からないまま終わらせるつもりだったのでしょう。

煙突を塞いだ意味を知らない。

一酸化炭素中毒との関係も知らない。

塚原殺害の計画も知らない。

そのままなら、恭平にとっては、

「夏休みに伯父と花火をした」

という思い出で終わります。

しかし湯川が真相へたどり着く

警察が一酸化炭素中毒を再現できない。

事件当夜だけ何か条件が違った。

湯川はそこから煙突へ注目します。

さらに、恭平が煙突の場所を知っていたことから、屋上へ上がったことに気づきます。

そして花火の夜の作業までつながります。

▶ 『真夏の方程式』湯川はいつ事件の真相に気づいた?伏線を時系列で解説

重治の最大の罪は「子どもを利用したこと」でもある

塚原を殺害したこと自体が重大な犯罪です。

しかし映画では、それとは別に、

恭平を利用したこと

が強く問題になります。

重治は成実を守りたい。

その気持ちは理解できます。

しかしそのために、何も知らない別の子どもの人生を傷つけました。

成実を守る。

その代わりに恭平が重い事実を背負う。

これでは、本当に誰かを守ったことになるのか。

作品が突きつける大きな問題です。

恭平は法的な意味で犯人なの?

映画の物語を理解するうえでは、

恭平を犯人と考えるべきではありません。

恭平には殺意がありません。

犯罪へ協力している認識もありません。

殺害計画を立てたのは重治です。

恭平は、大人に利用された側です。

ただし本人の心の問題としては、そう簡単に割り切れません。

恭平は将来「自分のしたこと」に気づく

映画のラストでは、恭平も花火の夜の出来事を思い返します。

あの煙突。

段ボール。

重治の様子。

塚原の死。

すべてをつなげれば、いつか答えへたどり着きます。

だから湯川は、

恭平が将来自分を責めてしまうこと

を心配します。

湯川はなぜすぐ真実を教えなかった?

湯川は恭平へ、その場で事件の全貌を突きつけません。

まだ子どもだからです。

そして何より、恭平は何も知らずに利用されています。

その恭平へ、

「君が人を殺す手伝いをした」

と突然伝えることが本当に正しいのか。

湯川は慎重に考えます。

▶ 『真夏の方程式』湯川はなぜ警察に真相を話さなかった?ラストの判断を考察

成実には恭平を守る使命が残る

湯川は成実へ、今後の恭平について話します。

いつか恭平が、

「あの夜は何だったの?」

と聞くときが来るかもしれない。

そのときには、隠さず真実を話す。

成実にはその役割が残されています。

つまり成実は、大人たちに守られるだけの立場から、

今度は自分が恭平を支える側

へ変わります。

ここからは考察|重治は「恭平なら気づかない」と思っていた

重治が恭平を使った理由には、物理的に煙突へ上がれなかったことがまずあります。

さらに、

子どもなら、この作業の意味まで考えないだろう。

という判断もあったと考えられます。

実際、事件の夜には気づきません。

しかし恭平は湯川と出会い、科学的に考えることを学んでいます。

原因と結果を考える。

なぜそうなったのかを疑問に持つ。

その結果、自分自身で真相へ近づいていく。

ここが非常に皮肉です。

湯川との出会いが恭平を救い、同時に真実へ近づける

もし恭平が湯川と出会っていなければ、自分の作業と塚原の死を結びつけずに生きた可能性もあります。

しかし湯川と科学実験をすることで、

原因。

条件。

結果。

を考える姿勢を学びます。

それによって、いつか自分が巻き込まれた事件の「方程式」も解いてしまう。

だからこそ湯川は、最後まで恭平のそばにいるという姿勢を示します。

まとめ|恭平を巻き込んだのは重治一人では犯行を完成できなかったから

重治が恭平を事件へ巻き込んだ最も直接的な理由は、

自分では屋上の煙突を塞げなかったから。

です。

さらに家族には犯行を知られたくない。

湯川にも不審に思われたくない。

その中で、何も事情を知らず、頼めば作業してくれる恭平を利用しました。

花火を口実にして煙突を塞がせ、一酸化炭素中毒を起こす条件を作ります。

しかし、

成実を守るために別の子どもを犠牲にした。

ここが重治の犯行の最も残酷な部分です。

そして事件が終わっても、恭平の問題は終わりません。

自分のしたことをどう理解し、どう受け止めるのか。

それが恭平に残された『真夏の方程式』なのだと思います。


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