『プロジェクト・ヘイル・メアリー』原作小説ネタバレ|上巻・下巻のあらすじと結末を解説
※この記事にはアンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』原作小説の結末まで重大なネタバレがあります。
アンディ・ウィアーのSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。
日本では上下巻に分かれて刊行されています。
映画を見て、
「原作ではもっと詳しくどう描かれている?」
「上巻と下巻はそれぞれどんな話?」
と気になった人も多いと思います。
ここでは原作小説の物語を、上巻から下巻、最終的な結末まで整理します。
結論|地球を救う物語であり、グレースが本当の意味で自分から誰かを救う物語
物語の大きな流れは、
グレースが記憶喪失状態で宇宙船の中で目覚める。
地球がアストロファージによって危機にあることを思い出す。
異星人ロッキーと出会う。
二人でタウ・セチの謎を解く。
アストロファージを食べるタウメーバを発見する。
グレースはロッキーを助けるため地球への帰還を捨てる。
最後はエリドで科学教師になる。
というものです。
上巻|グレースが宇宙船で目覚める
主人公ライランド・グレースは、見知らぬ部屋で目を覚まします。
体にはさまざまな医療装置。
そばには二人の人間。
しかし二人はすでに死亡しています。
自分の名前すら分からない
グレースには記憶がありません。
自分は誰なのか。
ここはどこなのか。
なぜ二人が死んでいるのか。
分からないことだらけです。
科学知識だけは残っている
個人的な記憶を失っていても、グレースには科学知識があります。
そこで周囲を観察。
重力。
機器。
星。
さまざまな情報を使い、自分の状況を推理していきます。
自分はライランド・グレース
記憶が少しずつ戻ります。
グレースは中学校の科学教師。
そして今いる場所は地球ではありません。
地球では太陽が暗くなっていた
過去の記憶。
太陽の明るさが少しずつ低下していました。
このまま減光が続けば地球の気温は低下。
農業へ大打撃が出ます。
原因はアストロファージ
太陽からエネルギーを吸収する未知の地球外生命体。
それが、
アストロファージ。
です。
▶ アストロファージとは何?なぜ恒星のエネルギーを奪うのかをわかりやすく解説
ストラットが世界規模の計画を始める
人類滅亡を避けるため、エヴァ・ストラットが世界中の専門家を集めます。
グレースもアストロファージを研究する科学者として参加します。
タウ・セチだけが無事だった
観測の結果、周辺の多くの恒星がアストロファージによって暗くなっています。
ところが、
タウ・セチだけ大きな減光がない。
人類最後の計画が決まる
タウ・セチにはアストロファージを抑える何かがある。
それを調べるため、人間を11.9光年先へ送る。
これが、
プロジェクト・ヘイル・メアリー。
です。
グレースは本来、宇宙へ行く人ではなかった
グレースは地球側で研究を担当します。
実際にタウ・セチへ行く科学担当者は別にいます。
ところが事故が起きる
本来の科学担当者とバックアップが事故で死亡。
代わりとなる人物が必要になります。
グレースには長期昏睡への適性があった
アストロファージに詳しい。
さらに長期昏睡へ耐えられる条件を持っている。
ストラットは、
グレースを代わりに宇宙へ送る
と決めます。
グレースは拒否する
ここが後半で明かされる大きな真実です。
グレースは自分から志願した英雄ではありません。
死にたくないから行きたくない。
と拒否します。
ストラットは強制する
ストラットは、グレース一人の意思より人類全体の生存を優先。
グレースを本人の意思に反してヘイル・メアリー号へ乗せます。
だから冒頭では記憶を失っていた
長期昏睡と出発時の出来事。
それらがグレースの記憶喪失につながっています。
現在|グレースはタウ・セチへ到着していた
過去を思い出しながら、グレースは現在の状況を理解していきます。
ほかの乗組員は死亡。
自分一人で人類を救う答えを探さなければなりません。
そこで謎の宇宙船を発見
タウ・セチ系でグレースは、自分以外の宇宙船に気づきます。
地球製ではありません。
ロッキーとのファーストコンタクト
船に乗っていたのは、地球外知的生命体。
グレースは彼を、
ロッキー
と呼びます。
ロッキーも故郷を救いに来ていた
ロッキーの母星エリドでも、アストロファージによって恒星が暗くなっています。
つまり二つの文明が、
同じ問題の答えを求めてタウ・セチへ来ていました。
二人は科学で会話を始める
最初は言葉が通じません。
数字。
数学。
元素。
物理。
を使って少しずつ意思疎通します。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースとロッキーはどうやって意思疎通した?科学で友情が生まれた理由
上巻後半|二人の共同研究が始まる
グレースは科学。
ロッキーは工学。
得意分野を補い合います。
同時に、二つの文明がまったく違う方向へ科学を発展させていることも分かります。
人類とエリド人はどちらが上でもない
人類は相対性理論や放射線について知っています。
ロッキーはゼノナイトのような、人類には作れない優れた素材を扱えます。
共同研究者から親友へ
研究。
食事。
睡眠。
文化。
少しずつ互いのことを知ります。
そして二人は、単なる利害関係を超えた友達になります。
下巻|タウ・セチだけ無事な理由を探す
二人の最大の目的は、
なぜタウ・セチだけアストロファージに負けていないのか。
を突き止めることです。
アドリアンへ向かう
調査の結果、タウ・セチ系の惑星へ注目します。
二人がアドリアンと呼ぶ惑星です。
危険な大気採取
アドリアンの大気からサンプルを取るため、二人は危険な作業を行います。
この中でグレースは生命の危機に陥ります。
ロッキーがグレースを助ける
ロッキーは自分にも危険がある状況でグレースを救出します。
ここで二人の友情はさらに深まります。
タウメーバ発見
採取したサンプルから、未知の生命体を発見。
タウメーバ。
です。
タウメーバはアストロファージを食べる
グレースが実験すると、タウメーバはアストロファージを捕食します。
ついにタウ・セチだけ無事だった理由が判明します。
▶ タウメーバとは何?アストロファージを食べる生物と弱点を解説
しかし天然のタウメーバはそのまま使えない
タウメーバは窒素に弱い。
地球やエリドの必要な環境へ持ち込むには耐性を高める必要があります。
グレースたちは進化させる
窒素濃度を少しずつ上げる。
生き残った個体を繁殖させる。
これを繰り返し、利用できるタウメーバを作ります。
任務成功|二人はそれぞれ故郷へ帰る
グレースは地球。
ロッキーはエリド。
二人は別れます。
ところがグレースが重大な問題へ気づく
進化したタウメーバは、ロッキーの船で使われているゼノナイトを通り抜けられるようになっていました。
ロッキーの燃料も食べてしまう
ロッキーの宇宙船の燃料はアストロファージ。
タウメーバが燃料タンクへ侵入すれば、
帰還用燃料を食べ尽くします。
グレースは究極の選択を迫られる
そのまま地球へ帰る。
それとも、ロッキーを助けに戻る。
地球へはビートルを送れる
グレースはタウメーバと研究結果を無人探査機へ載せ、地球へ発射できます。
つまり、
グレース本人が帰らなくても地球を救える可能性があります。
グレースはロッキーを選ぶ
最初は死ぬのが怖くて宇宙行きを拒否したグレース。
しかし今度は誰にも命令されず、自分からロッキーを助けに戻ります。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースはなぜロッキーを助けに戻った?最後の決断を考察
ロッキーを救出
グレースはロッキーの船へ追いつきます。
そしてロッキーを救うことに成功。
地球ではなくエリドへ
二人はロッキーの母星エリドへ向かいます。
グレースは地球へ戻る人生を手放します。
ラスト|グレースはエリドで暮らしている
それから長い年月。
原作の最終章では、
エリドへ到着して16年後
のグレースが描かれます。
エリド人が人間用の環境を作ってくれた
グレースはエリドの大気では生きられません。
そこでエリド人たちは、人間が生活できる専用環境を用意します。
ロッキーとの友情も続いている
ロッキーは故郷へ戻りました。
ミッションが終わっても、二人の関係は終わりません。
地球が救われたことを知る
ロッキーから、地球の太陽の明るさが回復したことを知らされます。
これは、
グレースが送ったビートルが地球へ到着。
人類がタウメーバを利用。
アストロファージ問題を解決した。
ことを意味します。
グレースは人類を救った
地球へ帰って歓声を浴びることはありません。
でも遠いエリドで、
自分のミッションが成功した
ことを知ります。
最後の仕事は「科学教師」
グレースはエリドで、若いエリド人へ科学を教えています。
宇宙飛行士でも英雄でもなく先生に戻る
人類を救った。
異星文明とファーストコンタクトした。
二つの文明を救った。
それでも最後にしているのは、
学校の先生。
です。
なぜこのラストが重要?
グレースが最初から求めていた人生は、有名な科学者になることでも英雄になることでもありません。
子供へ科学を教えること。
それが好きでした。
遠い星で本来の自分へ戻った
地球へは帰れなかった。
しかしグレースは、
自分らしい人生
へ戻っています。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』ラストでグレースが教師をしている意味は?最後の場面を考察
グレースは地球へ帰ることもできる?
帰還の可能性について話は出ます。
しかしグレースは、すぐに帰る決断をしません。
すでにエリドには、
ロッキー。
仕事。
生徒。
生活。
があります。
原作のテーマは「一人ではできない」
地球では世界中の科学者が協力。
宇宙ではグレースとロッキーが協力。
最後には二つの文明が、互いの知識によって救われます。
『オデッセイ』との大きな違い
同じアンディ・ウィアー作品ですが、『オデッセイ』では一人の人間が科学を使って生き残ることが大きな軸です。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』では、
一人では解けない問題を、まったく違う相手と協力して解く
方向へ広がっています。
まとめ|上巻は「自分と任務を思い出す話」、下巻は「ロッキーと二つの世界を救う話」
かなり大きく分けると、
上巻。
グレースが記憶喪失状態から、自分・地球の危機・ヘイル・メアリー計画を思い出す。
そしてロッキーと出会い、意思疎通を始める。
下巻。
グレースとロッキーがタウ・セチの謎を解き、タウメーバを発見。
最後にはグレースが地球への帰還よりロッキー救出を選び、エリドで新しい人生を始める。
という構成です。
科学的には、
「どうすればアストロファージを止められるか」
という物語。
しかしグレース自身の物語として見ると、
「自分の命を守りたかった普通の人が、最後には自分の意思で友達のために命を懸けられる人になる」
物語でもあります。
そして最後に待っているのは英雄としての凱旋ではなく、
遠い異星で再び科学を教える先生になるという静かな結末。
そこまで含めて『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の物語は完成します。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』原作上巻
グレースの目覚め、アストロファージ研究、ヘイル・メアリー計画、ロッキーとの出会いへ進んでいきます。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』原作下巻
ロッキーとの共同研究、タウメーバの発見、最後の決断、エリドでの結末まで描かれます。
