『麒麟の翼』父・青柳武明は息子を許していた?悠人に伝えたかったことを考察
※この記事には『麒麟の翼』の結末と青柳家の過去に関するネタバレがあります。
『麒麟の翼』では、父・青柳武明と息子・悠人の間に大きな距離があります。
しかも武明は、悠人が中学時代の水泳部事故に関わっていたことへ近づいていました。
では、武明は息子のしたことを許していたのでしょうか。
結論からいうと、「武明は悠人の過ちそのものを許して、なかったことにしようとした」と考えるのは違います。
むしろ武明が悠人に求めていたのは、過去から逃げずに向き合い、償ったうえで未来へ進むことだったと考えられます。
この記事でわかること
- 武明は悠人を許していたのか
- 父と息子がすれ違っていた理由
- 武明が息子の過去を調べた理由
- 七福神巡りに込められた父の思い
- 武明が悠人に最後に伝えたかったこと
青柳武明と悠人は分かり合えている親子ではなかった
青柳武明(中井貴一)と青柳悠人(松坂桃李)は、何でも話せる親子ではありません。
悠人は父に反発し、自分の過去についても十分に話していませんでした。
一方の武明も、息子に何が起きていたのかを後から知ることになります。
親子でありながら、お互いの本当の気持ちを知らない状態だったのです。
武明は悠人の過去を知っても無視しなかった
悠人の中学時代には、水泳部で重大な事故が起きていました。
武明は息子がその出来事と無関係ではないことに気づきます。
ここで武明が取った行動が重要です。
息子の過去だからと見て見ぬふりをするのでもなく、すぐに息子を切り捨てるのでもありません。
何が起きたのかを自分で知ろうと動き始めます。
「許す」と「なかったことにする」は違う
本作の父子関係を考えるとき、この二つを分ける必要があります。
子どもを愛しているからといって、子どもがしたことまで無条件に肯定することはできません。
過去の事故では、実際に傷ついた人がいます。
その事実を消すことはできません。
武明の行動を見る限り、息子の過ちを隠して守ろうとしたのではなく、きちんと向き合わせようとしていたと考える方が自然です。
それでも武明は悠人を見捨てていない
過ちを認めることと、その人自身を見捨てることも別です。
武明は悠人のしたことに向き合いながらも、息子の未来まで否定していたわけではありません。
ここに『麒麟の翼』の父親像があります。
責任から逃げてはいけない。
しかし、責任と向き合ったあとには未来がある。
武明が悠人に伝えたかったのは、そうしたことではないでしょうか。
七福神巡りは父親としての「償い」でもあった
武明は日本橋で七福神巡りをしていました。
家族には、その理由が分かりませんでした。
しかし水泳部事故との関係が明らかになると、その行動には息子の過去と向き合う父親としての意味が見えてきます。
詳しくは、『麒麟の翼』青柳武明はなぜ七福神巡りをしていた?日本橋に通った理由で解説しています。
武明が最後に麒麟像へ向かった意味
武明は胸を刺されたあと約8分間歩き、翼を持つ麒麟像へ向かいます。
この行動を「悠人を許した証拠」とまで断定することはできません。
しかし作品全体を見ると、麒麟像と「翼」が悠人の未来に重ねられていると考えることはできます。
過去に向き合ったうえで、その先へ進んでほしい。
父親としてのその思いが、最後の行動に込められていたと読むことができます。
悠人は父の死後にその思いを知る
武明が生きているうちに、親子がすべてを話し合うことはできませんでした。
加賀恭一郎(阿部寛)が事件を調べ、武明の行動を明らかにすることで、悠人は初めて父親が自分のために何をしていたのか知ります。
ここが本作の非常に切ないところです。
父親が生きているときには届かなかった気持ちが、死後になってようやく息子へ届くからです。
武明が悠人に伝えたかったのは「責任を取って前へ進め」だったのではないか
ここからは作品全体を踏まえた考察です。
武明の思いを一言にするなら、「何もなかったことにして生きろ」ではなかったでしょう。
自分のしたことから逃げず、傷つけた相手に向き合う。
そのうえで、自分の人生まで捨てずに先へ進む。
それが「翼」という作品の象徴にもつながっているように思えます。
まとめ|武明は息子の過ちを消すのではなく未来を信じていた
青柳武明が悠人の過ちを「許していたのか」という問いに、単純なYES・NOを当てはめるのは難しいでしょう。
武明は過去をなかったことにはしませんでした。
しかし、過ちを犯した息子そのものを見捨てたわけでもありません。
過去に向き合い、責任を取り、その先へ進んでほしい。
その父親としての思いが、七福神巡りや麒麟像へ向かった最後の行動につながっていると考えられます。
ラスト全体の意味については、『麒麟の翼』ラストの意味を考察|青柳悠人が最後に知った父の本当の思いもあわせてご覧ください。
原作『麒麟の翼』を読む
父と息子の関係をより深く味わいたい方は、東野圭吾の原作もおすすめです。武明の行動を追いながら読むと、「愛と償い」という作品のテーマがより見えやすくなります。
映画『麒麟の翼』を見返したい方へ
武明が悠人に何を伝えようとしていたのかを意識して見返すと、親子の場面や日本橋の描写にも新しい発見があります。DVD・Blu-rayで見直したい方は、ディスカスで作品を探してみてください。
