『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースとロッキーはどうやって意思疎通した?科学で友情が生まれた理由
※この記事には映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のロッキー登場以降についてネタバレがあります。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』で大きな見どころとなるのが、グレースとロッキーのコミュニケーションです。
地球人と異星人。
言葉は通じない。
体の構造も違う。
同じ空気の中で生活することすらできない。
それなのに二人は、やがて共同研究を行い、冗談を言い合い、最後には命を懸けて助け合う親友になります。
どうやってまったく別の星の二人が意思疎通できたのでしょうか。
結論|最初の共通言語は「科学」だった
グレースとロッキーは、最初から互いの言語を理解できたわけではありません。
二人が最初に利用したのは、
数字。
数学。
物理法則。
元素。
です。
文化や言語は違っても、宇宙の物理法則は同じ。
そこを出発点にして、少しずつ互いの言葉を学んでいきます。
最初は相手が知的生命体かどうかすら分からない
グレースがタウ・セチで見つけた宇宙船は、人類が作ったものではありません。
この時点でグレースは、
人類以外にも宇宙船を作れる知的生命体が存在する
という歴史的な事実に直面します。
いきなり直接会ったわけではない
互いの生存環境が分からない状態で接触するのは危険です。
そこで二人は船同士を接続しながら、隔離された状態で接触を始めます。
ロッキーとグレースは同じ空気を吸えない
グレースは地球型の酸素を含む大気で生活します。
一方、ロッキーは高温・高圧で人間とはまったく異なる大気環境を必要とします。
そのため、
同じ部屋に入って会話することすらできません。
最初のコミュニケーションは「数字」
数字は非常に便利です。
「1」「2」「3」という呼び方は地球とエリドで違っても、
一つ、二つ、三つという数量そのものは同じ。
です。
そこから二人は、相手の記号や音が何を意味しているのか確認していきます。
次に数学と物理を使う
たとえば素数。
原子。
元素。
長さ。
時間。
こうした概念は、地球文化を知らなくても共有できます。
「水素」は地球でもエリドでも同じ
呼び方は違います。
しかし水素原子の性質そのものは宇宙のどこへ行っても変わりません。
だから、
科学的な事実を指し示し、それに対応する相手の言葉を覚える。
という方法が使えます。
ロッキーの言葉は音楽のような言語
ロッキーは人間のように口で単語を発音しません。
複数の音程や和音を組み合わせて意味を伝えます。
グレースには、最初はただの音楽のように聞こえます。
▶ ロッキーはなぜ人間の言葉を話せる?グレースとの会話方法をわかりやすく解説
グレースはロッキー語の辞書を作る
ロッキーが特定の物を指す。
音を出す。
グレースがその音を記録する。
意味を登録する。
こうして一つずつ語彙を増やしていきます。
コンピューターも使って翻訳する
人間の耳だけで複雑な音程をすべて正確に記憶するのは難しい。
そこでグレースはコンピューターを利用し、ロッキーが発する音と意味を対応させます。
でも友情を作ったのは翻訳機だけではない
ここが重要です。
単語を翻訳できるだけなら、二人は単なる共同研究者で終わったかもしれません。
二人の距離を縮めたのは、
一緒に問題を解いた経験。
です。
グレースは科学、ロッキーは工学に強い
グレースは、
仮説を立てる。
実験する。
生物を分析する。
ことを得意とします。
一方ロッキーは、
機械。
材料。
設計。
工作。
に非常に強い。
一人ではできないことが二人ならできる
グレースが「こういう装置が欲しい」と考える。
ロッキーが作る。
ロッキーが知らない科学理論をグレースが説明する。
お互いが先生にも生徒にもなります。
文明の違いが弱点ではなく強みになる
エリド人はゼノナイトのような、人類には作れない素材を持っています。
一方、人類はエリド人が知らない科学理論を持っています。
▶ ロッキーはどうやって宇宙船を作った?エリド人の科学技術と人類との違いを解説
二人には「同じ目的」もあった
グレースは地球を救いたい。
ロッキーはエリドを救いたい。
どちらもアストロファージによって故郷が滅亡しかけています。
だから、
協力する理由が最初からあります。
しかも二人とも宇宙で一人になっていた
グレースはヘイル・メアリー号の他の乗組員を失いました。
ロッキーも自分の船の仲間を失っています。
二人とも、
文明の命運を背負いながら、遠い宇宙に一人だけ残された存在。
です。
この共通点が二人を近づける
体はまったく違います。
でも、
孤独。
責任。
故郷への思い。
という感情は共通しています。
ロッキーはグレースの睡眠まで気にする
交流が深まると、ロッキーはグレースを単なる共同研究者ではなく友人として扱うようになります。
互いの生活習慣や健康まで気遣う関係になります。
グレースもロッキーを「宇宙人」として扱わなくなる
最初は未知の地球外生命体。
しかし次第に、
ロッキーという一人の相手
として接するようになります。
互いに命を助けることで関係が決定的になる
二人は研究だけでなく、生命の危機でも助け合います。
ロッキーがグレースを助ける。
グレースもロッキーを助ける。
この経験によって信頼はさらに強くなります。
言葉が完璧でなくても友情は成立する
面白いのは、二人が完全に同じ言語を話せるようになってから友達になるわけではないことです。
理解できない言葉が残っていても、
行動から相手の意図を理解できます。
映画では「友情」が原作以上に前面へ出されている
原作者アンディ・ウィアーも、映画版では、
「協力することが重要」
という原作の核がより明確に強調された変更を好意的に評価しています。
科学は最初の橋、友情はその先
ここからは考察です。
二人を最初につないだのは科学です。
でも最後に二人をつないでいるのは、科学だけではありません。
最終的にはグレースがロッキーのために地球帰還を捨てる
グレースはロッキーが危機に陥ったと知ると、地球へ帰るルートから引き返します。
▶ 『プロジェクト・ヘイル・メアリー』グレースはなぜロッキーを助けに戻った?最後の決断を考察
研究相手なら、ここまではしない
地球へタウメーバを送り、自分はロッキーを助ける。
これは合理的な科学判断だけでは説明できません。
友達を見捨てたくない。
という個人的な感情があります。
最後には翻訳以上の理解へ進む
エリドで長く暮らすようになったグレースは、ロッキーたちの言語そのものにもさらに慣れていきます。
最初は音の意味を一つずつ調べていた二人。
最後には、それが日常になります。
まとめ|科学が二人を出会わせ、共同作業が友情へ変えた
グレースとロッキーが意思疎通できた流れは、
数字を使う。
数学・物理という共通法則を使う。
物と音を対応させる。
ロッキー語を記録して辞書を作る。
共同研究を続ける。
というものです。
しかし本作で重要なのは、
言葉が通じたから友達になったのではなく、一緒に問題を解き、失敗し、助け合ったから友達になった
という点です。
科学は二人の最初の共通言語。
その科学を使って過ごした時間が、最後には種族を越えた友情へ変わっていきます。
グレースとロッキーの交流を原作でも読みたい方へ
数字から始めて少しずつ語彙を増やし、二人が共同研究者から親友になっていく過程は、原作では映画以上に時間をかけて描かれています。
