『沈黙のパレード』パレードの日に何が起きた?蓮沼死亡までを時系列で整理
※この記事には映画『沈黙のパレード』のパレード当日の行動、蓮沼殺害方法、犯人まで重大なネタバレがあります。
『沈黙のパレード』の中で最も複雑なのが、タイトルにもなっているパレード当日です。
多くの登場人物が同時に動きます。
パレードへ参加する人。
祭りを取り仕切る人。
道具を運ぶ人。
店に残る人。
そして、その裏で蓮沼寛一(はすぬま・かんいち)への復讐計画が進んでいます。
そのため初見では、
「誰がどこで何をしていたの?」
「いつ蓮沼は殺された?」
と分かりにくくなります。
今回はパレードの日に起きたことを、できるだけシンプルに時系列で整理します。
パレード以前|町の人々は蓮沼への復讐を計画していた
まずパレード当日より前に、町の人々は蓮沼への復讐計画を作っています。
並木佐織(なみき・さおり)が殺された。
その犯人だと信じる蓮沼は釈放された。
しかも菊野へ戻り、佐織の家族の前へ姿を現した。
この状況に耐えられなくなった人々は、自分たちで蓮沼を追い詰めようとします。
なぜパレードの日を選んだ?
祭りの日には大勢の人が町を歩きます。
大道具や荷物も大量に運ばれます。
そして町の人たちは、パレードへ参加している姿を大勢の人に見られます。
つまり、
物を隠して運びやすい。
人の移動が目立ちにくい。
同時にアリバイも作りやすい。
という条件がそろっています。
当日① 液体窒素が用意される
計画に利用されるのが液体窒素です。
戸島修作(とじま・しゅうさく)は冷凍食品会社を営んでいるため、液体窒素へアクセスできます。
この液体窒素を、蓮沼のいる部屋まで運ぶ必要があります。
しかし一人が最初から最後まで運んだら、その人物がすぐ疑われます。
当日② パレードの道具へ紛れ込ませる
そこで液体窒素は、パレードで使われる大道具の中へ隠されます。
祭りの日なら、大きな荷物が運ばれていても不自然ではありません。
特に宝箱のような道具は、中身を隠したまま運搬できます。
当日③ 複数人が運搬を分担する
液体窒素は一人で運ばれません。
パレードの流れの中で、複数の人間が少しずつ担当します。
この方法には二つの利点があります。
一人ひとりの行為だけを見ると犯罪と分かりにくい。
全員が祭りへ参加していたというアリバイを作りやすい。
という点です。
当日④ 高垣も液体窒素を蓮沼のいる場所へ近づける
佐織の恋人・高垣智也(たかがき・ともや)も計画へ関わっています。
高垣は佐織を深く愛していた人物です。
そのため蓮沼に対する怒りも非常に強い。
高垣も輸送の一部分を担います。
当日⑤ 並木祐太郎が最終段階を担当する予定
佐織の父・並木祐太郎(なみき・ゆうたろう)は、計画の最後の段階で蓮沼のところへ向かう予定でした。
蓮沼を追い詰め、佐織について真実を話させる。
父親である祐太郎にとって、ここには強い覚悟があります。
ところが「なみきや」で客が体調を崩す
パレード当日、並木家の店「なみきや」で一人の客が急に体調を崩します。
祐太郎は放っておけません。
病院へ連れて行くなど、その対応に追われます。
これによって祐太郎は予定していた時間に動けなくなります。
この客の急病は偶然ではなかった
ここが後半の重要な真相です。
祐太郎を足止めする状況は、偶然起きたものではありません。
新倉直紀(にいくら・なおき)が、祐太郎が蓮沼のところへ行けない状況を作っていました。
なぜでしょうか。
当日⑥ 新倉直紀が祐太郎の代わりに動く
祐太郎が動けなくなったことで、直紀が代わりに蓮沼のもとへ向かいます。
表面上は、予定外の代役です。
しかし実際には、直紀自身がこの状況を作っていました。
つまり、
直紀は最初から自分が蓮沼と対峙できる状況を作ろうとしていた。
ことになります。
なぜ直紀は自分で蓮沼のところへ行きたかった?
直紀には町の人々へ話していない個人的な事情があります。
妻・新倉留美(にいくら・るみ)が、佐織失踪の日の出来事を告白していたからです。
留美は、
「自分が佐織を殺した」
と思い込んでいました。
さらに蓮沼は、その秘密を知って留美を脅していました。
当日⑦ 直紀が蓮沼の部屋へ液体窒素を持ち込む
直紀は町の人々が用意した計画を利用し、蓮沼のいる部屋へ入ります。
そして液体窒素を使います。
液体窒素が気化すると窒素ガスが広がり、部屋の酸素濃度が低下します。
蓮沼は酸素欠乏によって窒息状態に陥ります。
もともとの計画と直紀の行動には違いがある
ここが最も重要です。
町の人々が計画へ関わっていたのは事実です。
しかし直紀は、その計画をそのまま実行しただけではありません。
妻を守るため、蓮沼を死亡させる方向へ利用した。
のです。
当日⑧ 蓮沼が死亡する
結果として蓮沼は部屋で死亡します。
外傷による典型的な殺人ではありません。
首を絞めた痕などもなく、最初は死因の特定自体が難しい。
これが捜査をさらに難しくします。
当日⑨ 町の人たちは予定どおりパレードにいる
一方、町の人々はそれぞれパレードへ参加しています。
大勢の目撃者がいます。
だから警察から見ると、
全員に蓮沼を殺す動機はある。
しかし全員にアリバイもある。
という奇妙な状況になります。
当日⑩ 全員が沈黙する
さらに町の人たちは、自分たちが蓮沼を追い詰める計画へ関わっていたことを話しません。
一人が話せば他の人たちも巻き込まれる。
だから互いを守るために沈黙します。
これが、
『沈黙のパレード』
というタイトルをそのまま表す状況になります。
事件後① 湯川が蓮沼の死因を考える
湯川学(ゆかわ・まなぶ)は、蓮沼の遺体に典型的な窒息の外傷がないことへ注目します。
そして、
空気そのものの酸素濃度を下げた可能性
を考えます。
ここから液体窒素へたどり着きます。
事件後② 液体窒素と戸島の会社がつながる
液体窒素を使う方法が分かると、冷凍食品会社を経営する戸島との接点が見えてきます。
しかし戸島自身には犯行時刻のアリバイがあります。
ここから湯川は、
「一人の犯人が全部行ったのではない」
と考え始めます。
事件後③ 宝箱とパレードのルートがつながる
パレードで使われた宝箱。
複数の参加者。
移動ルート。
それらを組み合わせると、液体窒素をリレーのように運べることが分かります。
こうして町の人々の共同計画が見えてきます。
▶ 『沈黙のパレード』町の人たちは何をした?蓮沼殺害計画を時系列で解説
事件後④ それでも湯川には違和感が残る
共同計画は見えてきた。
しかし、それだけでは説明できない部分があります。
特に、なぜ祐太郎が予定どおり動けなかったのか。
そして誰が実際に蓮沼の部屋へ入ったのか。
ここから直紀の行動へつながります。
事件後⑤ 新倉直紀の本当の目的が判明
直紀は妻・留美を守ろうとしていました。
留美は佐織を殺したと思っている。
蓮沼はその秘密を使って留美を脅している。
そこで直紀は蓮沼を殺し、
「蓮沼自身が佐織殺害を認めた」
という物語まで作ろうとします。
そして、さらに佐織事件の真相が変わる
ところが湯川は物証から、留美が佐織を殺していなかった可能性へたどり着きます。
佐織は突き飛ばされたあと、まだ生きていた。
その後に蓮沼が連れ去り、致命傷を与えた可能性が高い。
つまり直紀は、
妻が犯していなかった殺人を隠すため、蓮沼を殺してしまった。
ことになります。
パレードの日を時系列で超簡単に整理
①町の人々が液体窒素を使う復讐計画を準備
②パレードの道具に液体窒素を隠す
③複数人で運搬を分担
④高垣らが蓮沼のいる場所へ近づける
⑤祐太郎が最終段階を担当する予定
⑥「なみきや」で客が体調を崩し、祐太郎が足止めされる
⑦直紀が祐太郎に代わって蓮沼の部屋へ行く
⑧直紀が液体窒素を利用し、蓮沼を死亡させる
⑨町の人々はパレードに参加しており、全員にアリバイが成立
⑩全員が計画について沈黙する
という流れです。
ここからは考察|華やかなパレードと殺人の対比がタイトルそのもの
町では音楽が鳴り、大勢の人が踊り、祭りを楽しんでいます。
その裏側では、佐織を失った人々が秘密の計画を進めています。
外から見ると華やかなパレード。
しかし誰も本当のことを話さない。
最もにぎやかな日に、最も大きな沈黙が生まれる。
この対比が『沈黙のパレード』というタイトルの大きな意味の一つだと考えられます。
まとめ|パレードそのものがアリバイと輸送手段になっていた
パレードの日に起きたことを整理すると、
町の人々は祭りを利用し、液体窒素を分担して運んだ。
全員がパレードへ参加することでアリバイを作った。
本来は祐太郎が蓮沼と対峙する予定だった。
しかし直紀が祐太郎を足止めし、自分が蓮沼のもとへ向かった。
直紀は妻を守るため、計画を利用して蓮沼を殺害した。
という流れです。
だから警察から見ると、
「全員が怪しいのに、全員が犯行現場にいない」
という難事件になります。
華やかなパレードそのものが、犯行道具の輸送ルートであり、アリバイ装置でもあった。
そこがこの事件最大の仕掛けです。
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