※この記事には映画『オデュッセイア』のスキュラとカリュブディスの場面、仲間6人の死についてネタバレがあります。

『オデュッセイア』の航海で、最も理不尽な選択を迫られる場面の一つが、

スキュラとカリュブディス。

です。

片方には、人間を食べる怪物スキュラ。

もう片方には、船ごと海へ飲み込む巨大な渦カリュブディス。

どちらへ進んでも危険です。

そこで気になるのが、

「スキュラとカリュブディスって何?」

「なぜ危険だと分かっている方へ進んだの?」

という点です。

結論|6人を失うか、全員を失うかという究極の二択

キルケから教えられた答えは非常に残酷です。

スキュラ側を通れば6人が犠牲になる。

しかし、

カリュブディスへ近づけば船そのものが飲み込まれ、全員が死ぬ可能性がある。

だからオデュッセウスは、被害を最小限にするためスキュラ側を選びます。

「正解」を選んだというより、

より小さい犠牲を選ぶしかなかった。

という場面です。

スキュラとは何者?

スキュラ(すきゅら)は、海峡の岩壁に潜む怪物です。

ホメロス原典では、

長い6本の首。

それぞれに恐ろしい頭。

12本の足。

を持つ存在として描かれます。

船が近づくと6つの頭を伸ばし、一度に6人をさらいます。

なぜ6人なの?

スキュラには6つの首があります。

そのため一度襲撃すると、

各頭が一人ずつ捕まえる。

という形で6人が犠牲になります。

原典では、オデュッセウスの仲間の中でも特に力のある6人が連れ去られます。

カリュブディスとは何者?

カリュブディス(かりゅぶでぃす)は、もう一方の岩の近くに存在する巨大な渦です。

原典では、一日に何度も海水を吸い込み、また吐き出す恐ろしい存在として描かれています。

船が水を吸い込むタイミングに巻き込まれれば、

船ごと沈む。

可能性があります。

スキュラとカリュブディスはどれくらい近い?

原典では二つの危険は非常に近い位置にあります。

つまり、

片方を完全に避ければ、もう片方へ近づく。

という地形です。

真ん中を安全に通過する道はありません。

誰がオデュッセウスへ教えた?

事前に危険を教えたのはキルケ(きるけ)です。

キルケは旅を再開するオデュッセウスへ、

セイレーン。

スキュラ。

カリュブディス。

太陽神の牛。

といった今後の危険を説明します。

▶ 『オデュッセイア』キルケは何者?仲間を豚にした理由とオデュッセウスとの関係

キルケの答えは「スキュラ側を通れ」

オデュッセウスは、

「両方を避ける方法はないのか」

と考えます。

しかしキルケは、スキュラは倒せる相手ではないと警告します。

そして、

6人を失う方が、船と全員を失うよりまし。

という判断を示します。

オデュッセウスは納得していた?

いいえ。

原典のオデュッセウスは、それでもスキュラと戦おうとします。

鎧を身につけ、槍まで用意します。

しかしキルケが言った通り、スキュラは人間が正面から戦って倒せる相手ではありません。

しかもオデュッセウスは仲間へ全部を話さなかった

ここが非常に重要です。

原典ではオデュッセウスは、

スキュラが必ず何人かを奪う。

ということを仲間へ伝えませんでした。

理由は、恐怖で仲間が船を漕ぐのをやめてしまうと考えたからです。

全員が船底へ逃げ込めば、今度は船全体が危険になります。

つまり6人は「知らないまま」犠牲になる

仲間たちは、そこに怪物がいて自分たちのうち6人が犠牲になると知りません。

オデュッセウスだけが知っています。

そして船がスキュラの岩へ近づいた瞬間、6人が連れ去られます。

▶ 『オデュッセイア』なぜ仲間6人を助けなかった?スキュラの場面でオデュッセウスが選んだもの

映画版ではどう描かれる?

ノーラン版でも、

巨大な渦=カリュブディス。

岩壁から襲う怪物=スキュラ。

という基本構造は残されています。

映画ではカリュブディスの巨大な水流が視覚的に強調され、その反対側からスキュラが仲間を襲います。

映画では仲間がオデュッセウスを責める

映画版で追加されているのが、

オデュッセウスが危険を事前に知っていたことを仲間が知り、責める。

という要素です。

これは原典にはそのまま存在しない映画独自の強調です。

映画では、

「6人を犠牲にした合理的な指揮官」

としてのオデュッセウスの責任がより強く描かれます。

スキュラとカリュブディスは「どちらも正解ではない」

普通の冒険物語なら、頭を使えば全員を救える方法が見つかりそうです。

しかしここでは違います。

何をしても犠牲が出ます。

だからこそ、このエピソードは、

「悪い選択肢の中から、よりましなものを選ぶ」

という意味で有名になりました。

英語にも残った「Scylla and Charybdis」

この物語から、

「between Scylla and Charybdis」

という表現があります。

意味は、

「どちらを選んでも危険」

という状況です。

日本語なら「前門の虎、後門の狼」に近い感覚です。

オデュッセウスは6人を選んで殺した?

厳密には、

「この6人を殺す」と指名したわけではありません。

スキュラ側を通れば誰か6人が奪われる。

それを分かったうえで、その航路を選んだということです。

そのため、直接殺したわけではありません。

しかし結果を知りながら進んだ以上、オデュッセウス自身も強い責任を感じます。

なぜカリュブディスを選ばなかった?

カリュブディスなら、もしかすると全員助かる可能性があったのでは。

そう考えたくなります。

しかしキルケの説明では、カリュブディスに船ごと飲み込まれれば、ポセイドンでさえ救えないほど危険です。

つまり、

6人の確実な犠牲。

と、

全員死亡の可能性。

を比べた判断でした。

ここからは考察|これは船長として最も残酷な決断

自分一人なら、危険へ飛び込むこともできます。

しかしオデュッセウスは船長です。

自分以外の命まで判断しなければなりません。

6人を助けようとして全員死なせるのか。

6人を失ってでも残りを救うのか。

どちらを選んでも、後悔は残ります。

ノーラン版では、こうした指揮官として他人の命を選別する重さが、トロイア戦争でのオデュッセウスの罪悪感とも重ねられています。

まとめ|スキュラは6人、カリュブディスは全員を奪う危険

二つの怪物を整理すると、

スキュラ:岩壁に潜み、6つの頭で6人をさらう怪物。

カリュブディス:船ごと飲み込む巨大な渦。

キルケはスキュラ側を通るよう助言。

理由は、6人を失う方が全員を失うよりましだから。

オデュッセウスは危険を仲間へ完全には知らせなかった。

結果として6人がスキュラに奪われる。

という場面です。

スキュラとカリュブディスの怖さは、怪物そのもの以上に、

「誰かを犠牲にしなければ他の人を救えない」

という選択をオデュッセウスへ迫るところにあります。


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『オデュッセイア』を原典でも読みたい方へ

キルケの警告から、スキュラが6人を奪う場面、カリュブディスの描写まで詳しく確認したい方は、ホメロスの原典『オデュッセイア』もおすすめです。

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