『オデュッセイア』テレマコスは誰?オデュッセウスの息子が果たした役割を解説
※この記事には映画『オデュッセイア』のテレマコス、オデュッセウスとの再会、求婚者との戦い、ラストまでネタバレがあります。
『オデュッセイア』というと、どうしても父オデュッセウスの冒険が注目されます。
しかし物語のもう一人の重要人物が、
息子テレマコス。
です。
父がトロイア戦争へ行った時、テレマコスはまだ幼い子どもでした。
その後、父は約20年間帰りません。
「テレマコスは何をする人物?」
「なぜ自分も旅に出るの?」
「最後は王になったの?」
という疑問を整理します。
結論|テレマコスは「父を待つ少年」から「自分で王国を守る男」へ成長する人物
テレマコス(てれまこす)は、オデュッセウスとペネロペの息子です。
物語の最初では、
父親がいないため、自分の家さえ思うように守れない若者。
として登場します。
しかし、父の消息を探す旅へ出ます。
外の世界を知ります。
父と再会します。
そして最後には父と並んで求婚者と戦います。
つまりテレマコスには、
一人の青年が大人になる成長物語
があります。
父オデュッセウスをほとんど知らない
オデュッセウスがトロイア戦争へ出発した時、テレマコスはまだ幼児でした。
そのため、
「父親が英雄だった」
という話は聞いていても、本人との思い出はほとんどありません。
父を待っているというより、
伝説の人物としてしか知らない父を探している。
という面があります。
オデュッセウス不在のイタカはどうなっていた?
王が20年近く帰らない。
生きているのか死んでいるのか分からない。
そのためイタカの王宮には大勢の求婚者が集まります。
彼らはペネロペとの結婚を求めています。
しかし同時に、王宮へ居座って財産を浪費しています。
テレマコス自身の家なのに、支配できない
本来ならテレマコスはオデュッセウスの後継者です。
しかし物語の初めではまだ若く、何十人もの有力な求婚者を追い出せる力がありません。
自分の家であるにもかかわらず、求婚者たちが酒を飲み、家畜を食べ続けています。
テレマコスは最初から強い英雄ではない
ここが父オデュッセウスとの大きな違いです。
父はトロイア戦争を生き抜いた歴戦の王。
息子はまだ、自分がどう行動すべきか分からない青年。
『オデュッセイア』の序盤では、
テレマコスがどう成長するか
が大きな物語になっています。
テレマコスを動かしたのがアテナ
原典では女神アテナ(あてな)が、姿を変えてテレマコスへ近づきます。
そして、
父のことを調べろ。
外の世界へ出ろ。
何もしないまま求婚者に家を奪われるな。
と促します。
▶ 『オデュッセイア』アテナは何者?なぜオデュッセウスを助け続けたのか
テレマコス自身も旅に出る
『オデュッセイア』ではオデュッセウスだけが旅をしているわけではありません。
テレマコスも父の消息を探すため、イタカを離れます。
ピュロス。
スパルタ。
などへ向かい、父と一緒にトロイア戦争へ参加した人物たちから話を聞きます。
ネストルから父の世代について聞く
ピュロスでは老王ネストル(ねすとる)に会います。
ネストルはトロイア戦争を生き残った人物です。
しかしオデュッセウスの現在地までは知りません。
そこでさらにスパルタへ向かいます。
メネラオスからオデュッセウスの生存情報を得る
スパルタではメネラオス(めねらおす)とヘレネに会います。
ここでテレマコスは、父が少なくとも戦争後しばらく生きていたことや、カリュプソの島にいるという情報につながります。
つまり旅をしたことで、
「父は死んだ」と決めつけなくてよい。
ことが分かります。
父を探す旅は、自分自身を知る旅でもある
テレマコスは、父の仲間たちからオデュッセウスについて聞きます。
父がどんな男だったのか。
戦争で何をしたのか。
どれほど頭の切れる人物だったのか。
それを知ることは、
「その息子である自分は何者なのか」
を知ることにもなります。
一方、求婚者はテレマコスを殺そうとする
テレマコスが成長し、外で味方を作る可能性は求婚者にとって危険です。
そのため帰路で待ち伏せし、殺そうとする計画まで立てます。
つまりテレマコスは、単なる「王子」ではなく、求婚者にとって王位争いの邪魔な存在です。
そして父オデュッセウスが帰ってくる
長い旅の末、オデュッセウスもイタカへ帰還します。
しかし最初は変装しています。
原典ではアテナの力で老人の姿になっています。
▶ 『オデュッセイア』なぜ変装して故郷へ戻った?妻にも正体を明かさなかった理由
父と息子はどうやって再会した?
オデュッセウスは、信頼できる者たちと接触したあとテレマコスと会います。
原典ではアテナがオデュッセウスの姿を戻します。
突然、老人だった男が立派な姿へ変わる。
テレマコスは最初、神ではないかと疑います。
テレマコスはすぐ父だと信じた?
最初は簡単に信じません。
当然です。
父親をほとんど知らない。
20年近く帰っていない。
目の前の人物は先ほどまで老人のように見えていた。
しかしオデュッセウスが事情を説明し、二人は父子として再会します。
再会後、すぐ求婚者への作戦を立てる
感動の再会だけでは終わりません。
二人には宮殿を取り戻す必要があります。
オデュッセウスは正体を隠したまま宮殿へ入る。
テレマコスは父の協力者として動く。
ここから初めて、
父と息子が同じ側で戦う。
ことになります。
武器を隠す役割もテレマコス
原典では、宮殿にある武器を求婚者たちが簡単に使えないよう移動させるなど、テレマコスも計画へ参加します。
父の後ろにいるだけではありません。
弓の試練ではテレマコスも挑戦する
ペネロペがオデュッセウスの弓を使った試練を出します。
テレマコスも弓を張ろうとします。
原典では何度か挑み、もう少しで成功しそうになります。
しかし父の意図をくみ、最終的には譲ります。
その後、オデュッセウスが弓を手にします。
▶ 『オデュッセイア』弓の試練とは?なぜ求婚者たちは弓を引けなかったのか
求婚者との戦いでは父と並んで戦う
オデュッセウスが正体を明かすと、宮殿で戦いになります。
テレマコスも父とともに武器を取ります。
最初は求婚者を追い出すこともできなかった青年が、
最後には自分の家を取り戻すため戦う男。
へ成長しています。
原典では父の後継者として成長したことが重要
テレマコスの旅には、直接オデュッセウスを救出するような成果はありません。
しかし、それが無意味だったわけではありません。
旅によって、
人前で話す。
王たちと会う。
父の過去を知る。
自分で判断する。
危険に向き合う。
という経験をします。
ノーラン版映画ではテレマコスがさらに重要
映画版では、父不在の間に育った息子と、20年ぶりに帰ってきた父の距離が強く描かれます。
テレマコスにとってオデュッセウスは、
「父」より先に「有名な英雄」。
です。
だから再会しても、すぐ理想的な親子になるわけではありません。
父の英雄像と現実のオデュッセウスには差がある
テレマコスが聞いてきた父は、知恵の英雄。
トロイを落とした男。
しかし実際に帰ってきた父は、
戦争で傷つき。
仲間を全員失い。
罪悪感を抱えた人間です。
ここに映画版ならではの父子関係があります。
映画版のラストではテレマコスが王になる
ノーラン版では、求婚者を倒したあと、オデュッセウスが以前のようにイタカ王へ戻って終わりません。
王位をテレマコスへ譲ります。
そしてオデュッセウスはペネロペとともに再び旅立ちます。
▶ 『オデュッセイア』最後はどうなった?オデュッセウスの帰還とラストを解説
これは原典と大きく違う
ホメロス原典では、オデュッセウスはイタカ王として復帰します。
映画の、
「父が王位を息子へ渡して去る」
という結末はノーラン版の大きな変更です。
▶ 映画『オデュッセイア』と原典の違いは?ホメロスの叙事詩から変更された点を比較
なぜ映画ではテレマコスを王にした?
ここからは考察です。
オデュッセウスは古い世代です。
トロイア戦争を戦った。
都市を滅ぼした。
多くの仲間を死なせた。
その男が王位へ戻り、以前と同じように国を統治する。
ノーラン版はそこを選びません。
「父の時代を終わらせる」ラスト
テレマコスは父と同じ戦争を経験していません。
父の失敗も知ります。
それでも自分の国を守ろうとします。
つまり映画では、
戦争の世代から次の世代へ。
という意味で王位継承を使っているように見えます。
テレマコスもまた「オデュッセイア」を経験した
オデュッセウスの旅ほど長くはありません。
しかしテレマコスも家から出ます。
知らない人に会う。
父について知る。
自分が何者なのか考える。
そして家へ戻る。
つまり父とは別の形で、息子自身も一つの「帰還の旅」を経験しています。
母ペネロペとの関係も重要
父がいない20年間、テレマコスを育てたのはペネロペです。
求婚者へ抵抗する母。
家を守りたい息子。
二人でオデュッセウス不在の王家を支えています。
▶ 『オデュッセイア』ペネロペはなぜ20年間待った?求婚者と再婚しなかった理由
まとめ|テレマコスは「父を探す息子」から「父のあとを継ぐ男」へ成長する
テレマコスについて整理すると、
オデュッセウスとペネロペの息子。
父が出征した時は幼児だった。
求婚者に家を占拠されても最初は追い出せない。
アテナに促され、父の消息を探す旅へ出る。
ネストルやメネラオスから父について聞く。
イタカで父オデュッセウスと再会。
求婚者との戦いでは父と並んで戦う。
映画版では最後にイタカ王となる。
という人物です。
『オデュッセイア』はオデュッセウスが家へ帰る物語ですが、同時に、
父を知らずに育った息子が、自分自身の力で父の後継者になっていく物語。
でもあります。
テレマコスの視点を意識すると、親子の物語としてもかなり見え方が変わります。
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『オデュッセイア』を原典でも読みたい方へ
テレマコスが父を探してピュロスやスパルタへ向かう旅や、アテナとの関係、父子の再会まで詳しく読みたい方は、ホメロスの原典がおすすめです。
『オデュッセイア』上巻
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『オデュッセイア』下巻
オデュッセウスとの再会、求婚者との戦いなど、父子が力を合わせる展開はこちらで描かれます。
