トビー・マグワイア主演、サム・ライミ監督による『スパイダーマン』シリーズは、2007年の『スパイダーマン3』で終了しました。

しかし実は、その後に『スパイダーマン4』を制作する計画が本当に存在していました。

しかも公開時期まで決まり、企画も進んでいました。

それなのに、なぜ4作目は作られなかったのでしょうか。

「サム・ライミ監督とソニーが揉めた?」
「ヴィランが決まらなかった?」
「トビー・マグワイアが降板した?」

といった話もありますが、実際の理由はもう少し整理して見る必要があります。

この記事では、トビー版『スパイダーマン4』が中止になった理由と、どこまで企画が進んでいたのかを、ソニーの公式発表などをもとに解説します。

※この記事はトビー・マグワイア版『スパイダーマン』3部作の内容に触れています。

結論|サム・ライミ監督が納得できる作品を公開予定までに完成させるのが難しくなった

『スパイダーマン4』が中止された最大の理由は、サム・ライミ監督が予定されたスケジュールの中で、自分が納得できる4作目を完成させることが難しくなったことです。

ソニーは2010年1月、トビー・マグワイアとサム・ライミによるシリーズを終了し、新しいキャストと制作陣によってスパイダーマンを再スタートさせると正式発表しました。

その公式発表では、

『スパイダーマン4』は2011年公開予定だったものの、まだ撮影には入っていなかった

ことも明記されています。

そしてサム・ライミ自身も、4作目を作ることを楽しみにしていた一方で、スタジオとマーベルにはシリーズを新しい方向へ進める機会があるとコメントしています。

『スパイダーマン4』は本当に決まっていた?

はい。

単なるファンの希望や噂ではなく、正式に企画されていた映画です。

ソニーの2010年の公式発表でも、

「Spider-Man 4 was to have been released in 2011」

と明記されています。

つまり『スパイダーマン3』のあと、トビー・マグワイア版をそのまま続ける構想があり、4作目は2011年公開を目指して進められていました。

しかし制作途中で方針が変更され、最終的にその企画は中止されます。

『スパイダーマン3』でシリーズを終わらせる予定だったわけではない

『スパイダーマン3』を見ると、一応ひとつの区切りはついています。

しかし当時のソニーは、それでトビー版を終わらせるつもりではありませんでした。

4作目では、ピーター・パーカーとMJのその後を描きながら、新たなヴィランとの戦いを描く構想が進められていました。

トビー・マグワイアも続投予定で、サム・ライミ監督も引き続きシリーズを担当する予定でした。

つまり、

「3作目の興行が失敗したから即終了した」

という単純な話ではありません。

サム・ライミ監督は『スパイダーマン3』に不満があった?

『スパイダーマン4』の話では、前作『スパイダーマン3』の制作事情もよく語られます。

特に有名なのがヴェノムです。

ライミ監督はもともとヴェノムに強い思い入れを持っていたわけではなく、『スパイダーマン3』ではスタジオ側の要望もあって登場させたことを後年語っています。

その結果、3作目には、

  • サンドマン
  • ニュー・ゴブリン
  • ヴェノム

と複数のヴィランが登場し、物語もかなり多くの要素を抱えることになりました。

ライミ監督は後年、『スパイダーマン3』について自分自身が納得していない部分があったことも認めています。

そのため4作目では、自分が本当に納得できるスパイダーマン映画を作りたいという思いが強かったと考えられます。

『スパイダーマン4』では誰が敵になる予定だった?

最も有名なのがヴァルチャーです。

開発段階では、ジョン・マルコヴィッチがヴァルチャー役として有力視されていました。

さらにブラックキャットなど、別のキャラクターを登場させる案も検討されていたと報じられています。

ただし注意したいのは、企画段階の案と、最終決定した完成脚本は別だということです。

ネット上では「幻の『スパイダーマン4』はこのストーリーだった」と断定的に紹介されることがありますが、映画は撮影前に中止されています。

そのため、検討されていたアイデアをそのまま完成予定のストーリーとして扱うのは正確ではありません。

なぜ脚本がなかなか決まらなかった?

4作目では脚本開発が何度も行われました。

しかしライミ監督が納得できる形にまとめることが難しく、制作スケジュールとの兼ね合いが問題になっていきます。

ソニー側には2011年という公開予定がありました。

大規模な映画なので、その日に間に合わせるためには撮影・編集・VFXなどを逆算して制作を進めなければなりません。

一方でライミ監督は、中途半端な状態で急いで4作目を作ることを望まなかったとされています。

ここが中止に至る核心です。

サム・ライミが「降板したから中止」なの?

大きく見ればそうですが、単純な喧嘩別れというより、作品を完成させる条件が整わなくなったと見る方が正確です。

当時の報道では、ライミ監督が2011年の公開予定までに満足できる映画を完成させられないと判断したことが伝えられています。

そしてソニーは、ライミ版4作目をさらに延期するのではなく、シリーズそのものを新しく始める決断をしました。

実際、ソニーの公式発表ではライミ自身がスタジオを非難するようなコメントはしていません。

むしろ、4作目を楽しみにしていたことを認めながら、新しい方向性へ進むことへの理解を示しています。

トビー・マグワイアが辞めたから中止になった?

これも少し違います。

トビー・マグワイアは4作目への続投が予定されていました。

つまり、

「トビーがスパイダーマンをやりたくなくなったので4作目が消えた」

わけではありません。

ライミ版そのものが終了することになったため、結果としてトビーもスパイダーマン役を離れることになりました。

その後、新シリーズではピーター役も変更されます。

なぜ公開延期ではなくリブートを選んだ?

ここが重要です。

ソニーには、スパイダーマンという大きな映画シリーズを今後も展開していく考えがありました。

しかし4作目をそのまま待ち続けるのではなく、若いピーター・パーカーから物語を始め直す方向を選びます。

2010年1月のソニー公式発表では、新シリーズについて、

高校生のピーターが、普通の若者としての問題と特殊な力の両方に向き合う物語

になることが説明されています。

そして新しいキャストと制作陣で2012年公開を目指すことが発表されました。

その新シリーズが『アメイジング・スパイダーマン』

ライミ版『スパイダーマン4』中止からわずか数週間後、ソニーは新たな監督としてマーク・ウェブを起用すると発表しました。

そして新しいピーター・パーカーにアンドリュー・ガーフィールドが選ばれます。

2012年に公開されたのが、

『アメイジング・スパイダーマン』

です。

これは『スパイダーマン3』の続編ではありません。

ピーターがクモに噛まれるところから、すべてを新しく描き直したリブート作品です。

▶ 『アメイジング・スパイダーマン3』はなぜ作られなかった?シリーズ終了の理由

なぜまたピーターが高校生から始まった?

ソニーの公式発表では、新しいシリーズについてピーターの原点へ戻ることが強調されていました。

トビー版では3作品を通して、ピーターは高校生から大学生、そして大人へと成長していきます。

そこで次のシリーズでは、同じピーターの続きを描くのではなく、再び若いピーターからスタートしました。

マーク・ウェブ監督も、自分はライミ監督の後をそのまま引き継ぐのではなく、スパイダーマン神話に新しい視点を加える立場だと説明しています。

『スパイダーマン4』の中止と『アメイジング3』中止は違う

実写スパイダーマンでは、アンドリュー・ガーフィールド版でも3作目が作られませんでした。

ただし、2つの中止は事情が違います。

トビー版『スパイダーマン4』
→ サム・ライミ監督が予定された公開時期までに納得できる作品を完成させるのが難しくなり、シリーズをリブート。

『アメイジング・スパイダーマン3』
→ 2作目後にシリーズ戦略が変化し、最終的にソニーとマーベル・スタジオが協力してトム・ホランド版へ再リブート。

つまりトビー版は4作目そのものの制作過程で止まり、アンドリュー版は映画ユニバース全体の方針変更によって終了した、と整理すると分かりやすいです。

▶ 『アメイジング・スパイダーマン3』はなぜ作られなかった?シリーズ終了の理由

幻の『スパイダーマン4』にはどんな構想があった?

中止後も、4作目についてはさまざまな情報が明らかになっています。

ヴァルチャーを中心としたヴィラン案や、ピーターとMJのその後、新しいキャラクターの登場など、多くのアイデアが検討されていました。

また後年には、制作段階で作られたコンセプトアートやストーリーボードも知られるようになっています。

ただし、これらはあくまで開発途中の『スパイダーマン4』です。

映画が完成していない以上、最終的にどの要素が残り、どのストーリーになっていたかは分かりません。

ライミ監督は後悔している?

ライミ監督は後年、4作目を作れなかったことについてたびたび振り返っています。

特に『スパイダーマン3』に自分自身が満足できていなかったため、4作目ではシリーズを良い形に戻したいという思いがあったことを語っています。

だからこそ、納得できない脚本のまま制作を急ぐのではなく、最終的に離れる道を選びました。

結果的にはシリーズ終了となりましたが、作品の質を妥協してまで4作目を完成させなかったという側面もあります。

トビー版の物語は『スパイダーマン3』で完全に終わった?

長い間、そう思われていました。

『スパイダーマン4』が中止されたことで、トビー版ピーターの最後の姿は2007年の『スパイダーマン3』になりました。

しかし2021年、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でトビー・マグワイアが再びピーター・パーカーを演じます。

そこで登場したトビー版ピーターは、『スパイダーマン3』から年月を重ねた人物です。

つまり、作られなかった『スパイダーマン4』とは違う形ですが、トビー版ピーターの「その後」が14年ぶりに映画で描かれたことになります。

▶ 『ノー・ウェイ・ホーム』でなぜトビーとアンドリューが戻ってきた?マルチバースを解説

『ノー・ウェイ・ホーム』でMJとのその後も少し分かった

『ノー・ウェイ・ホーム』では、トビー版ピーターが自分の人生について少しだけ語ります。

MJとの関係についても、簡単ではなかったものの、関係が続いていることを示す発言があります。

そのため『スパイダーマン4』で本来描かれたかもしれないピーターとMJのその後を、ほんの少しだけ知ることができました。

もちろん、これは中止された4作目のストーリーを引き継いだという意味ではありません。

しかし長年トビー版を見てきたファンにとっては、『スパイダーマン3』で止まっていたピーターが今も人生を続けていることを確認できた重要な場面です。

もし『スパイダーマン4』が作られていたらアンドリュー版はなかった?

少なくとも、2012年に現在の形の『アメイジング・スパイダーマン』が公開されていた可能性は低かったでしょう。

ソニーがアンドリュー版を始めた直接のきっかけは、ライミ版4作目が中止され、新しいキャストと制作陣でシリーズを再スタートしたことだからです。

その意味では、

『スパイダーマン4』中止

『アメイジング・スパイダーマン』誕生

という関係があります。

そしてさらにアンドリュー版が終了し、ソニーとマーベルの協力によってトム・ホランド版が誕生します。

実写スパイダーマンの歴史は、何度も「作られなかった続編」が次のシリーズを生み出してきた歴史でもあるのです。

3人の実写スパイダーマンにつながった

結果として、

トビー・マグワイア版

アンドリュー・ガーフィールド版

トム・ホランド版

という3つの実写シリーズが誕生しました。

そして最終的には『ノー・ウェイ・ホーム』で、この3人が同じ映画に登場します。

当時『スパイダーマン4』が中止になったときには想像もできなかった展開ですが、シリーズのリブートを繰り返したからこそ、後に3人の異なるピーター・パーカーという設定を生かした映画が成立したとも言えます。

▶ トビー版・アンドリュー版・トム版スパイダーマンは何が違う?能力・性格・世界観を比較

まとめ|『スパイダーマン4』は作れなかったのではなく、納得できる形で作らなかった

トビー・マグワイア版『スパイダーマン4』は、正式に企画され、2011年公開を予定していました。

しかし撮影に入る前に制作が止まり、ソニーはシリーズを新しく始めることを決めます。

大きな理由は、サム・ライミ監督が決められたスケジュールの中で、自分が納得できる4作目を完成させることが難しくなったことでした。

そのため、

「トビー・マグワイアが辞めたから」
「『スパイダーマン3』が失敗したから」
「ヴィランが決まらなかったから」

という一つの理由だけで説明するのは正確ではありません。

4作目を無理に進める代わりに、ソニーは新しいキャストと制作陣によるリブートを選択しました。

その結果生まれたのが『アメイジング・スパイダーマン』です。

そしてトビー版ピーターは14年後、『ノー・ウェイ・ホーム』で再びスクリーンへ戻ってきました。

幻となった『スパイダーマン4』は完成しませんでしたが、トビー版ピーターの物語そのものはそこで完全に消えたわけではなかったのです。

▶ 『アメイジング・スパイダーマン3』はなぜ作られなかった?シリーズ終了の理由

▶ 『ノー・ウェイ・ホーム』でなぜトビーとアンドリューが戻ってきた?マルチバースを解説