『白鳥とコウモリ』倉木達郎はなぜ安西知希が犯人だと分かった?原作では織恵が知っていた
※この記事には、映画・原作『白鳥とコウモリ』の重大なネタバレがあります。
映画『白鳥とコウモリ』を観ていて、かなり引っかかるのが、
「倉木達郎は、なぜ安西知希が白石健介を殺した犯人だと分かったの?」
という点です。
達郎は白石健介殺害事件について、
「全部、私がやりました」
と自白します。
しかし本当の犯人は安西知希です。
では、達郎はいつ、どうやって知希の犯行を知ったのでしょうか。
結論からいうと、
原作では、先に知希の犯行を知ったのは母親の浅羽織恵です。
その後、織恵から倉木達郎へ連絡が入り、さらに達郎自身も知希本人から白石殺害について詳しい話を聞きます。
つまり達郎は、
「知希が怪しい」と推理しただけではありません。
織恵から知らされ、知希本人からも犯行の詳細を聞いたうえで、知希が真犯人だと知っていました。
映画版では、この流れがかなり省略されています。
そのため映画だけを見ると、
「達郎はどうして分かった?」
「なぜ自分がやっていない事件について、あんなに具体的に話せた?」
と疑問が残りやすくなっています。
この記事では、達郎が知希を真犯人だと知った経緯を、原作と映画の違いも含めて順番に整理します。
▶ 映画『白鳥とコウモリ』ネタバレ解説|犯人は誰?東京ドームの嘘・お札・タイトル・ラストまで考察
結論|達郎は浅羽織恵から知らされ、知希本人からも詳しい話を聞いた
原作では、倉木達郎が突然「知希が犯人だ」と勘づいたわけではありません。
流れを簡単にすると、
倉木達郎が浅羽織恵へ白石健介についてメールする
↓
安西知希がそのメールを見る
↓
知希が白石健介と33年前の事件の真相を知る
↓
知希が白石健介を殺す
↓
浅羽織恵が知希を問い詰める
↓
知希が自分の犯行を認める
↓
織恵が倉木達郎へ知らせる
↓
達郎が知希本人から詳しい話を聞く
↓
達郎が自分が犯人だと嘘の自白をする
という流れです。
つまり、
達郎は推理で真犯人へたどり着いたのではありません。
原作では、かなり具体的な情報伝達の流れがあります。
映画では「達郎が知希の犯行を知る経緯」がかなり省略されている
映画版では、この部分がかなり簡略化されています。
そのため映画だけを見ると、
「達郎は、どうして知希が犯人だと分かったの?」
という疑問が残りやすくなっています。
これは見逃したわけではありません。
原作にある、
倉木から織恵へのメール。
知希がその情報を見る。
織恵が知希を問い詰める。
織恵から倉木へ連絡する。
倉木が知希本人から話を聞く。
という一連の流れが、映画化にあたってかなり圧縮されています。
▶ 映画『白鳥とコウモリ』原作との違いは?変更点・省略された場面・ラストを解説
まず重要なのが浅羽織恵という人物
達郎が知希の犯行を知る流れを理解するには、浅羽織恵の存在が欠かせません。
織恵は、33年前の灰谷昭造殺害事件で犯人として疑われた福間淳二の娘です。
そして原作では、安西知希の母親でもあります。
つまり、
福間淳二 → 浅羽織恵 → 安西知希
とつながります。
一方の倉木達郎は、33年前の事件の真相を知りながら白石健介をかばった人物です。
その結果、福間淳二が犯人として疑われ、その家族まで長く事件の影響を受けます。
達郎はそのことに強い罪悪感を抱え続けていました。
▶ 『白鳥とコウモリ』浅羽織恵とは誰?福間淳二・安西知希・倉木達郎との関係を整理
倉木達郎は白石健介が生きていることを織恵へ伝える
原作では、達郎は白石健介が現在も生きており、弁護士として暮らしていることを知ります。
達郎にとって白石は、33年前に灰谷昭造を殺した本当の犯人です。
一方、織恵は、その事件で犯人として疑われた福間淳二の娘です。
達郎は悩んだ末に、
白石健介について浅羽織恵へメールで知らせます。
このメールが、33年前の事件と現在の白石健介殺害事件をつなぐ非常に重要なきっかけになります。
安西知希は倉木から織恵へ送られたメールを見た
ここが大きなポイントです。
原作では、安西知希が倉木達郎から織恵へ送られたメールを見ます。
そこで知希は、
祖父・福間淳二が灰谷殺害の真犯人ではなかったこと。
本当の犯人が白石健介だったこと。
白石が今も弁護士として生きていること。
を知ります。
つまり、
知希が白石健介の存在と過去を知ったきっかけそのものが、達郎から織恵へのメールだった
わけです。
この事実は、後に達郎が強い罪悪感を抱く理由にもつながります。
知希は白石健介を殺害する
白石の存在と33年前の真相を知った知希は、白石へたどり着きます。
そして現在、白石健介を殺します。
一見すると、
「祖父・福間淳二の復讐」
に見えます。
ただし知希の動機は、それだけではありません。
知希自身には、以前から殺人そのものへの危うい関心がありました。
そのため、
家族の過去が白石を標的にする理由となり、知希自身の危険な衝動が殺人を実行させた
と見る方が自然です。
▶ 『白鳥とコウモリ』安西知希の殺人動機がひどい?「殺人に興味があった」の意味を考察
最初に知希が犯人だと知ったのは浅羽織恵
白石健介が殺されたあと、織恵は知希を問い詰めます。
そして原作では、
知希が自分で白石を殺したことを認めます。
つまり、倉木達郎より先に知希の犯行を知ったのは、母親の浅羽織恵です。
ここを知ると、
「達郎はどうやって知希が真犯人だと分かったのか」
という疑問がかなり分かりやすくなります。
浅羽織恵はなぜ倉木達郎へ知らせた?
織恵にとって達郎は、33年前の事件の真相を知る人物です。
そして、そもそも白石健介が生きていることを織恵へ知らせてきたのも達郎です。
そのため、息子・知希が白石を殺したと分かったあと、織恵はその事実を達郎へ伝えます。
ここで達郎は初めて、
安西知希が白石健介殺害事件の真犯人だと具体的に知る
ことになります。
倉木達郎は知希本人からも詳しい話を聞いている
原作では、達郎は織恵から聞いただけで終わりません。
さらに安西知希本人と話します。
そして、白石殺害について詳しい経緯を聞きます。
これがかなり重要です。
達郎は、
「知希が犯人だと知っていた」だけではありません。
犯行の内容まで本人から聞いていました。
だからこそ、後に警察へかなり具体的な自白をすることができたわけです。
「達郎はなぜ犯行の細かいことまで知っていた?」もこれで説明できる
映画を観ていると、もう一つ疑問が出ます。
「達郎は自分がやっていない殺人について、なぜここまで具体的に話せるの?」
という点です。
しかし原作では、知希本人から事件について詳しく聞いています。
そのため、達郎が白石との接触や犯行の流れについて具体的に知っていても不自然ではありません。
映画では、この「知希本人から詳細を聞いた」という流れがかなり省略されているため、達郎の自白だけを見ると唐突に感じやすくなっています。
達郎は推理して知希を当てたわけではない
ここははっきり整理しておいた方がいいです。
映画だけを見ると、
「達郎が状況から知希を犯人だと察したのかな」
とも見えます。
しかし原作では違います。
達郎が推理だけで真犯人を特定したわけではありません。
浅羽織恵から知希の告白を知らされ、さらに知希本人から詳しい話を聞いています。
つまり、
「知希が怪しいと思った」
のではなく、
「知希が犯人だと知った」
うえで動いています。
それなら、なぜ達郎は警察へ知希を突き出さなかった?
ここで次の疑問が出ます。
真犯人を知っているなら、そのまま警察へ知らせればいい。
それなのに達郎は、そうしません。
理由は、33年前の事件への罪悪感です。
33年前、達郎は白石健介をかばって真実を隠しました。
その結果、福間淳二が犯人として疑われ、その家族まで長く苦しみます。
そして安西知希は、その福間淳二の孫です。
達郎からすれば、知希は、
自分が33年前に救えなかった福間家につながる次の世代
でした。
▶ 『白鳥とコウモリ』福間淳二はなぜ犯人にされた?冤罪事件の真相を解説
達郎は「知希の殺人にも自分が関係している」と感じた?
ここからは考察です。
達郎からすれば、
「33年前に自分が白石をかばわなければ、福間家はここまで苦しまなかった」
という罪悪感があったと考えられます。
さらに、知希が白石健介の存在を知ったきっかけも、
自分が織恵へ送ったメール
でした。
そのため達郎は、
「また自分の行動が福間家の悲劇につながってしまった」
と感じた可能性があります。
もちろん、知希が白石を殺した責任は知希本人にあります。
しかし達郎自身は、そこまで自分の責任として背負ってしまったのではないでしょうか。
知希の犯行は倉木達郎の責任ではない
ここは分けて考える必要があります。
達郎のメールが結果的に、知希が白石の存在を知るきっかけになった。
これは事実です。
しかし、
白石健介を殺すことを選んだのは安西知希本人です。
達郎が33年前に真実を隠したこと。
達郎が織恵へメールを送ったこと。
知希が白石を殺したこと。
それぞれの責任は別です。
背景を理解することと、殺人の責任を他人へ移すことは違います。
▶ 『白鳥とコウモリ』真犯人は誰?安西知希はなぜ白石健介を殺した?
だから達郎は自分が犯人だと嘘の自白をした
こうして達郎は、知希を警察へ突き出すのではなく、
自分が白石健介を殺した
と嘘の自白をします。
さらに33年前の灰谷昭造殺害事件についても、自分が犯人であるかのように語ります。
つまり達郎は、
過去と現在、二つの事件をすべて自分の罪として引き受けようとした
わけです。
▶ 『白鳥とコウモリ』倉木達郎はなぜ嘘の自白をした?本当は何を隠していた?
達郎は33年前と同じことを繰り返している
達郎の行動を並べると、かなり皮肉です。
33年前
白石健介を守るため、真実を隠す。
現在
安西知希を守るため、自分が犯人だと嘘をつく。
二度とも、
「誰かの人生を守るために真実を隠す」
という同じ選択をしています。
しかし、そのたびに別の人が傷つきます。
33年前には福間家。
現在では息子・倉木和真。
▶ 『白鳥とコウモリ』倉木達郎は悪人なのか?2度も人をかばった理由を考察
現在では和真が「殺人犯の息子」になる
達郎が白石殺害を自白したことで、息子・和真は、
「殺人犯の息子」
という立場へ追い込まれます。
しかし実際には、達郎は白石を殺していません。
この構造は33年前の福間家とよく似ています。
福間本人は灰谷を殺していない。
しかし家族まで事件の影響を受けた。
現在では達郎も白石を殺していない。
それでも和真が「殺人犯の息子」として見られる。
つまり達郎は、過去に福間家へ起きたことを、自分の家族にも繰り返しかけたことになります。
▶ 『白鳥とコウモリ』倉木和真は父・達郎の嘘をどう受け止めた?親子の結末を考察
浅羽織恵の立場もかなり重い
織恵も、この事件では非常に苦しい立場です。
父・福間淳二は、灰谷殺害の真犯人ではないのに犯人として扱われました。
そのため織恵は、
「殺人犯とされた父の娘」
として事件の影響を受けます。
ところが現在では、自分の息子・安西知希が本当に白石健介を殺します。
つまり織恵は、
冤罪の影響を受けた家族
だった立場から、
本当の殺人犯の母親
という立場へ移ります。
この反転も、『白鳥とコウモリ』らしいところです。
福間淳二→浅羽織恵→安西知希という3世代の悲劇
家族関係で整理すると、さらに分かりやすくなります。
福間淳二
33年前、灰谷殺害の真犯人ではないのに犯人として疑われる
↓
浅羽織恵
父の事件によって人生へ大きな影響を受ける
↓
安西知希
祖父の事件の真相を知り、白石健介を殺す
つまり、
一度隠された真実が、次の世代、そのまた次の世代まで影響している
わけです。
映画ではなぜこの経緯を省略した?
ここからは考察です。
原作では、
倉木と織恵の長年の関係。
倉木から織恵へのメール。
知希がメールを見る。
織恵が知希を問い詰める。
織恵から倉木へ連絡する。
倉木が知希本人から話を聞く。
という複数の段階があります。
映画では、限られた上映時間の中で、和真と美令を中心に物語を整理する必要があります。
そのため、こうした情報伝達の流れをかなり圧縮したと考えられます。
「見逃したのかな?」と思わなくて大丈夫
映画を観て、
「達郎が知希の犯行を知る場面、見逃した?」
と思った人もいるかもしれません。
しかし、原作と比べると、映画ではこの経緯自体がかなり簡略化されています。
そのため疑問を持つのは自然です。
むしろ、
「なぜ達郎は知っている?」
「なぜ詳しく自白できる?」
と感じた場合、原作で省略された部分が気になったということです。
映画と原作の違いを簡単に整理
映画版
達郎が知希をかばっていることは分かる。
しかし、いつ・どうやって知希の犯行を知ったのかはかなり省略されている。
原作
倉木が織恵へ白石の情報をメール。
知希がそのメールを見る。
知希が白石を殺害。
織恵が知希を問い詰めて犯行を知る。
織恵が倉木へ知らせる。
倉木が知希本人から犯行の詳細を聞く。
そのうえで倉木が身代わりになる。
原作では、この流れがかなり具体的に描かれています。
よくある疑問|達郎が知希を犯人だと知った経緯を整理
達郎はどうやって安西知希が犯人だと分かった?
原作では、先に知希の犯行を知った浅羽織恵から知らされます。その後、達郎自身も知希本人から詳しい話を聞きます。
達郎が自分で推理したの?
いいえ。推理だけで真犯人を特定したわけではありません。
最初に知希の犯行を知ったのは誰?
原作では母親の浅羽織恵です。
織恵はどうやって知った?
白石の死後、知希を問い詰め、知希本人が自分の犯行を認めます。
達郎はなぜ犯行の詳しいことまで知っていた?
知希本人から白石殺害について詳しい話を聞いていたためです。
映画ではその場面がある?
原作ほど具体的には描かれず、かなり省略されています。
なぜ達郎は警察へ知希を突き出さなかった?
33年前に福間家を苦しめたことへの罪悪感と、自分のメールが知希を白石へつなげたという新たな罪悪感から、知希を守ろうとしたと考えられます。
まとめ|達郎は推理で知希を当てたのではなく、織恵と知希本人から真相を知った
倉木達郎が安西知希を真犯人だと知った経緯は、原作を読むとかなりはっきりしています。
まず、倉木達郎が浅羽織恵へ白石健介について知らせます。
そのメールを安西知希が見る。
知希は白石健介と33年前の事件の真相を知る。
そして白石を殺害する。
その後、浅羽織恵が知希を問い詰めます。
知希は自分の犯行を認めます。
織恵は倉木達郎へ知らせます。
さらに達郎は、知希本人から犯行の詳細を聞きます。
つまり、
達郎は状況証拠だけで「知希が犯人だ」と推理したわけではありません。
織恵から知らされ、知希本人からも詳しい話を聞いたうえで、真犯人だと知っていました。
そして、知希が白石健介の存在を知ったきっかけも、達郎自身が織恵へ送ったメールでした。
達郎には、
33年前に福間家を苦しめる結果を生んだ罪悪感
だけでなく、
自分が送った情報が結果的に知希と白石をつないでしまったという新たな罪悪感
まであったと考えられます。
だから達郎は知希を警察へ突き出さず、自分が罪をかぶろうとします。
映画だけでは少し唐突に見えた倉木達郎の身代わり自白。
原作では、その前にこれだけの経緯があったわけです。
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映画を観て原作も気になった方へ
映画では時間の都合で省かれている倉木達郎・浅羽織恵・安西知希の情報伝達や人物関係も、原作ではより細かく描かれています。
特に、達郎がどうやって知希の犯行を知ったのか、なぜ身代わりになるところまで決意したのかを深く知りたい方には原作もおすすめです。
